2025.10.30 NEW 放電技術と空気浄化の豆知識
目次
最近のエアコンや空気清浄機、ドライヤーには、当たり前のように「イオン機能」が搭載されています。
ボタンひとつで、目に見えない何かが放出され、空気をきれいにしたり、髪をサラサラにしてくれたり…。
なんとなく良さそうだと感じて使ってはいるものの、「イオンって一体何?」と聞かれると、正確に答えられる方は少ないかもしれません。
また、森や滝の近くに行くと、空気が澄んでいてリフレッシュできるように感じますよね。
実はこれも、自然界に豊富に存在する「イオン」のおかげなのです。
このコラムでは、私たちのとても身近な存在である「イオン」の正体から、家電製品がイオンを発生させる仕組み、そしてイオンが私たちの生活を快適にしてくれる理由まで、分かりやすく紐解いていきます。
イオンとは、通常は電気的に中性である原子や分子が、電子を失ったり(プラスイオン)、逆に得たり(マイスイオン)した状態のことです。
そして、空気清浄機などの家電製品は、このプラスとマイナスのイオンを意図的に作り出して空間に放出しています。
放出されたイオンは、まるで磁石のように、空気中に浮遊するウイルスやアレル物質、ニオイの元となる分子に吸着し、それらの活動を抑制(無力化)する能力を持っています。
つまり、イオン機能とは、目に見えない小さな粒を「お掃除ロボット」のように放ち、フィルターだけでは取り切れない微細な有害物質まで捕まえにいってくれる、先進的な技術なのです。
では、なぜ電気を帯びただけの小さな粒が、消臭や除菌、美髪などに効果を発揮するのでしょうか。
その秘密は、プラスイオンとマイスイオンがペアになることで生まれる「化学反応」にあります。
イオンの正体:プラスとマイナス
すべての物質は「原子」からできており、原子の中心にはプラスの電気を持つ「原子核」が、その周りにはマイナスの電気を持つ「電子」が存在します。
通常、プラスとマイナスの電気量は釣り合っており、原子全体としては電気的に「中性」です。
しかし、何らかのエネルギーが加わることで、原子が電子を一つ失うことがあります。
この状態が「プラスイオン」です。
逆に、原子が外から電子を一つ余分にもらってしまうと「マイスイオン」になります。
自然界では、水が激しくぶつかり合う滝つぼなどで大量のマイナスイオンが発生しています。
イオン発生の仕組みの一例:コロナ放電
では、家電製品はどのようにしてイオンを作り出しているのでしょうか。
その多くは「コロナ放電」という現象を応用しています。
これは、細い針状の電極に高い電圧をかけることで、
空気中の分子(主に酸素や窒素、水蒸気)を強制的にプラスとマイナスに分解(イオン化)する技術です。
この技術を使うことで、自然界と同じプラスイオン(H⁺など)とマイナスイオン(O₂⁻など)を安定して大量に作り出すことができます。
イオンの効果の一例:「OHラジカル」への変化
放出されたプラスとマイナスのイオンは、空気中のウイルスやニオイ分子の表面に付着し、
そこで化学反応を起こして「OHラジカル」のような、極めて酸化力の強い物質を生成します。
この生成されたOHラジカルなどが、有害物質の構造を破壊して無力化する、という仕組みです。
すると、イオンはそれらの表面から水素原子(H)を抜き取り、化学反応を起こします。
この反応の結果、イオンは「OHラジカル」という、極めて酸化力の強い物質に変化します。(一部の家電で発生する現象)
OHラジカルは非常に不安定で、すぐに近くの物質から電子を奪って安定しようとするため、ウイルスや菌の細胞膜、ニオイ分子などを破壊し、無力化してしまうのです。
反応後は、無害な「水(H₂O)」になって空気中に戻るため、安全性が高いのも大きな特長です。
空気清浄機・エアコン:空間の消臭・除菌
イオンを放出することで、フィルターだけでは対応しきれない、
空間に浮遊するウイルス・カビ菌・アレル物質(花粉、ダニのフンなど)の活動を抑制する作用が期待されています。
また、ソファやカーテンなどに付着したニオイの元を分解する効果も期待できます。
静電気の抑制(除電効果)
冬場の「バチッ」という静電気や、衣類のまとわりつきは、物質がプラスやマイナスどちらかの電気に偏る(帯電する)ことで起こります。
イオンは、この偏った電気を中和する働き(除電)をします。
プラスに帯電した物体にはマイナスイオンが、マイナスに帯電した物体にはプラスイオンが引き寄せられ、
電気的にバランスの取れた状態に戻してくれるのです。
●除電効果の例 ヘアドライヤー:
マイナスイオンを髪に吹き付け、プラスに帯電しやすい髪の静電気を抑えることで、キューティクルを整え、髪の広がりやパサつきを防ぎます。
●除電効果の例 産業分野:
半導体工場など、わずかな静電気でも製品不良につながる現場では、「イオナイザー」と呼ばれる装置で常にイオンを発生させ、静電気を徹底的に除去しています。
リラックス効果(マイナスイオン)
森林や滝、温泉地など、自然豊かな場所に行くと、心身ともにリフレッシュできますよね。
こうした場所は、空気中のマイナスイオンが豊富であることが知られています。
このことから、マイナスイオンにはリラックス効果や、心身を爽快にする効果があると言われています。
科学的な研究も進められていますが、自然の中で感じる心地よさの一因を、マイナスイオンが担っていると考えられています。
一部の家電製品は、この効果を応用し、快適な空間づくりを目指しています。
様々な製品に応用されるイオン技術ですが、製品を選ぶ際にはどのような点に注意すればよいのでしょうか。
発生するイオンの種類や技術名に注目する
一口に「イオン」といっても、その発生方式や放出されるイオンの種類は、メーカーの独自技術によって様々です。
プラズマクラスター(シャープ):
自然界と同じプラスとマイナスのイオンを同時に放出する技術。OHラジカルを生成して作用することが多いです。
ナノイー(パナソニック):
水分に包まれた微細なイオン(OHラジカル)を放出する技術。
これらの技術は、それぞれ得意とする効果をアピールしています。
解決したい悩みに合わせて、各社の技術の特長を比較検討するのがおすすめです。
「フィルター性能」との組み合わせで考える
空気清浄機の場合、イオン機能は「補助的」な役割を担うことが多いです。
空気中のホコリや花粉、PM2.5といった「粒子」を物理的に除去する「フィルターの性能」が、基本性能として重要と言われています。
まずは信頼性の高いフィルターを搭載していることを確認した上で、「+α」の付加価値として、
ご自身のライフスタイルに合ったイオン機能が搭載されている製品を選びましょう。
さて、これまで解説してきたイオンが「コロナ放電」によって作られることを説明しました。
このコロナ放電を、安全かつ効率的に起こすために不可欠な部品が「電極」です。
実は、この電極の形状や素材が、空気清浄機やドライヤーから発生するイオンの質や量、さらには安全性(オゾン発生量など)を大きく左右する「心臓部」とも言えるパーツなのです。
従来、イオンを発生させる電極としては、先端が鋭い「針電極」や細い金属線である「ワイヤー電極」が主流でした。
しかしこれらの電極には、先端が摩耗しやすく耐久性が低い、高い電圧が必要でオゾンが発生しやすい、といった課題がありました。
これらの課題を解決できる製品が、弊社ケンエーが製造する「放電ブラシ電極」です。
これは、髪の毛よりもさらに細い、数ミクロン単位の極細繊維を無数に束ねたブラシ状の電極です。
一本一本の繊維の先端が独立した放電点として機能するため、従来の電極よりもメリットが生まれます。
<放電ブラシ電極の特徴の一例>
1. 安定したイオン量:
多数の放電点から、広範囲にわたってムラのない大量のイオンを発生させることができます。
2. 高い安全性(低オゾン):
非常に細い先端からは、低い電圧でも効率よく放電が起こります。
これにより、省エネであると同時に、有害なオゾンの発生量を大幅に抑制でき、より安全な製品づくりに貢献します。
3. 優れた耐久性と柔軟性:
しなやかな繊維でできているため、衝撃や振動に強く、長寿命です。
また、様々な形状に加工できるため、小型化が進む最新の家電製品にも柔軟に対応できます。
皆様が普段お使いの空気清浄機やドライヤーが、より安全で高性能になっている背景には、こうした「電極」という部品の技術革新があります。
私たちケンエーは、この「放電ブラシ電極」の特許技術を持つメーカーとして、目に見えない場所から皆様の快適な暮らしを影ながら応援しています。
ご興味がございましたら、ぜひ当社の製品ページもご覧ください。
まとめ
今回は、身近なようで意外と知られていない「イオン」の正体から、
その効果、そしてイオン技術を支える「放電電極」という中核部品の世界までを解説しました。
イオンとは「電気を帯びた原子や分子」のこと。
家電は「コロナ放電」でイオンを人工的に生成している。
イオンが変化した「OHラジカル」が、ウイルスやニオイの元を酸化分解する。
空気清浄機は「フィルター性能」を基本に、「イオン機能」を付加価値として選ぶのが良い。
イオンの性能や安全性は、「電極」という部品の進化に支えられている。
家電製品を選ぶ際には、その機能だけでなく、その背景にある部品技術にも思いを馳せてみると、また違った視点が見えてくるかもしれません。
このコラムが、皆様の製品選び、そして快適な暮らしづくりの一助となれば幸いです。
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