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2025.10.29 静電気の豆知識

【帯電防止剤とは?】知っておきたい静電気を防ぐ重要要素

空気が乾燥する季節、スーパーのレジ袋などが手にまとわりついて離れにくい、といった経験はありませんか?
これらはすべて『静電気』が原因で起こる現象です。
こうした日常のちょっとした不快感だけでなく、例えば製品の表面にホコリがびっしり付いてしまったり、
フィルムが機械にくっついて作業が滞ったりと、静電気は目に見えないところで様々な問題を引き起こしています。

このような静電気による困りごとを防ぐために、『帯電防止剤』というものが私たちの身近な製品にも使われています。
一体、帯電防止剤はどのような仕組みで静電気の問題を解決してくれるのでしょうか。

①静電気が引き起こす問題とは?

「たかが静電気」と侮ってはいけません。静電気が引き起こす問題は、意外と深刻なものがあります。

(1)ホコリやゴミの付着: 静電気は物を引き寄せる力を持っています。
そのため、製品や部品に静電気が溜まっていると、空気中のホコリやゴミを磁石のように吸い寄せてしまいます。
これが食品や精密機器であれば、製品の品質を著しく低下させる原因となります。

(2)電子機器の誤動作や故障: スマートフォンやパソコンなどの精密な電子機器は、わずかな静電気放電(ESD:ElectroStatic Discharge)でも、内部の回路が誤動作を起こしたり、最悪の場合、破損してしまったりする可能性があります。
「バチッ!」と感じるほどの静電気でなくても、電子機器にとっては大きなダメージとなり得るのです。

(3)火災や爆発の危険: ガソリンスタンドや化学工場など、可燃性のガスや液体、粉体を取り扱う環境では、静電気の火花が着火源となり、大きな火災や爆発事故につながる危PLINGがあります。
静電気は、目に見えないところで重大な危険を引き起こす可能性があるのです。

②なぜ?:

そもそも、なぜ静電気が発生し、問題を引き起こすの?
では、なぜこのような問題が起こるのでしょうか?まず、静電気が発生する仕組みから見ていきましょう。
静電気とは、物体同士が接触したり、摩擦したり、剥がれたりする際に、それぞれの物体が持つ電気的なバランス(プラスとマイナス)が崩れ、一方にプラスの電気、もう一方にマイナスの電気が偏って溜まってしまう現象です。
通常、電気は流れていく性質がありますが、プラスチックや合成繊維、乾燥した空気などは電気を通しにくい「絶縁体」であるため、発生した電気がその場に留まり、「帯電」した状態になります。
このようにして溜まった静電気(電荷)は、以下のような理由で問題を引き起こします。

引き寄せる力(クーロン力): 帯電した物体は、周囲にある逆の電気を帯びたものや、電気的に中性のものを引き寄せます。
これが、ホコリやゴミが付着する原因です。

放電(ESD): 溜まった静電気は、電気を通しやすいもの(金属や人体など)が近づくと、一気に流れ込もうとします。
この時に発生するのが「バチッ!」という放電(静電気放電)です。この放電のエネルギーが、電子機器の回路を破壊したり、可燃性物質に引火させたりするのです。

特に、空気が乾燥していると、物体の表面から水分が奪われ、電気が流れにくくなる(電気抵抗が高くなる)ため、静電気が溜まりやすく、放電も起こりやすくなります。冬場に静電気を感じやすいのはこのためです。

③対策は?:

静電気を防ぐ救世主!「帯電防止剤」とは?
こうした静電気による様々な問題を解決するために活躍するのが「帯電防止剤」です。
帯電防止剤とは、文字通り、物体が静電気を帯びるのを防ぐ(あるいは溜まった静電気を速やかに逃がす)ために使用される薬剤のことです。
帯電防止剤は、主に以下の2つの方法でその効果を発揮します。

(1)表面の電気の流れやすさ(導電性)を高める: 帯電防止剤が物体の表面に電気を通しやすい層を作ります。
これにより、静電気が発生しても、その場に留まることなく、空気中や接触している他の物体、最終的には大地(アース)へと素早く逃がしていくことができます。電気がスムーズに流れる道を作るイメージです。

(2)空気中の水分を吸着させる: 一部の帯電防止剤は、空気中の水分を物体の表面に吸い寄せる性質を持っています。
水分は電気を通しやすいため、物体の表面に薄い水の膜ができることで、表面の電気抵抗が下がり、静電気が溜まりにくくなります。
また、発生した静電気も水分を通じて流れやすくなります。

これらの働きによって、帯電防止剤は静電気の発生そのものを抑えたり、発生した静電気を安全に逃がしたりすることで、前述したようなホコリの付着、電子機器の故障、火災・爆発といったリスクを低減するのです。

帯電防止剤が電気を逃がす仕組みには、大きく分けて「イオン伝導タイプ」と「電子伝導タイプ」があります。

イオン伝導タイプ: 帯電防止剤自身や、吸着した水分中のイオン(電気を帯びた原子や分子)が電気を運びます。
多くの界面活性剤タイプや高分子タイプがこれにあたり、湿度がある程度必要になる場合があります。

電子伝導タイプ: 物質の中を電子が移動することで電気を運びます。
金属酸化物タイプや導電性ポリマーがこれにあたり、湿度に左右されにくく、安定した性能を発揮します。

④どんな製品があるの?

帯電防止剤は、その成分や形態によっていくつかの種類に分けられ、それぞれ特徴が異なります。
用途に合わせて適切なタイプを選ぶことが重要です。ここでは代表的な3つのタイプと、それらが使われている製品例を紹介します。

1. 界面活性剤タイプ(イオン伝導タイプが中心)
特徴: プラスチックなどの表面に塗布したり、素材に練り込んだりして使われます。親水性(水と馴染みやすい性質)を持ち、空気中の水分を吸着して電気抵抗を下げ、イオン伝導によって静電気を逃がします。「界面活性剤練りこみタイプ」とも呼ばれます。
メリット: 比較的手軽でコストが安く、すぐに効果が現れる(即効性)ものが多いです。
デメリット: 空気中の水分を利用するため、湿度の影響を受けやすく、効果の持続期間が限られる場合があります。
摩擦などによって表面から失われることもあります。
主な種類: 非イオン性、アニオン性(マイナスイオン)、カチオン性(プラスイオン)、両性(pHで性質が変わる)などがあります。
使われている製品例:
(1)帯電防止ポリ袋・チャック付き袋: 電子部品の簡易包装、ホコリを嫌う製品の保管など。(例:メーカーとしてアキレス、大倉工業、福助工業など)
(2)帯電防止フィルム・シート: 作業台のマット、クリーンルームの間仕切りなど。(例:メーカーとしてアキレス、オカモト、三菱ケミカルなど)
(3)帯電防止スプレー: 衣類、カーペット、OA機器などに吹き付けて一時的に静電気を防止。(例:メーカーとしてライオン、花王、エステー、サンワサプライなど)

2. 高分子タイプ(主にイオン伝導タイプ)
特徴: 特殊な高分子(ポリマー)自体が帯電防止性能を持ちます。
プラスチック原料に混ぜ込んで(内部練込み型)使われることが多く、製品全体に均一な帯電防止効果を与えます。
メリット: 効果が長期間持続し(半永久的とも呼ばれる)、湿度への依存性が界面活性剤タイプよりも低いのが特長です。
練り込み型のため、表面を拭いたり洗浄したりしても効果が失われにくいです。
デメリット: 界面活性剤タイプに比べてコストが高くなる傾向があります。
また、練り込む樹脂の種類や量によっては、元の樹脂の物性(強度や透明度など)に影響を与える可能性があります。
主な種類: ポリマー型アニオン性、導電性ポリマー(電子伝導タイプの場合もある)などが一般的です。
使われている製品例:
(1)高性能な帯電防止袋・フィルム: クリーンルームで使用される精密部品の包装、長期保管用の包装材など。
(例:メーカーとして アキレス、グンゼ、三菱ケミカル、東レなど)
(2)帯電防止コンテナ・トレイ: 電子部品の工場内搬送や保管。
(例:メーカーとして岐阜プラスチック工業(リス)、三甲(サンコー)、DICプラスチックなど)
(3)帯電防止機能を持つ樹脂成形品: OA機器の筐体、自動車部品など。

3. 金属酸化物タイプ(電子伝導タイプ)
特徴: 酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、酸化アンチモン(Sb2O3)といった金属の酸化物を微粒子にして、樹脂に練り込んだり、フィルム表面にコーティングしたりして使われます。
これらの金属酸化物自体が電気を通す性質(電子伝導性)を持っています。
メリット: 湿度の影響をほとんど受けず、非常に安定した帯電防止性能を長期間発揮します。耐熱性や透明性に優れるものもあります。
デメリット: 他のタイプに比べて高価であり、加工が複雑になる場合があります。
使われている製品例:
(1)ハイグレードな帯電防止袋・フィルム: 特に高いレベルの静電気対策と防湿性などが同時に求められる電子デバイスの包装など。(例:メーカーとして三菱ケミカル、東洋紡、リンテックなど)
(2)透明導電膜: タッチパネル、液晶ディスプレイ、太陽電池の電極など。
(例:メーカーとして住友化学、日東電工、富士フイルムなど)
(3)帯電防止コーティング剤: クリーンルームの床や壁、装置の表面など。

製品を選ぶ際のポイント
どの帯電防止製品を選ぶかは、以下の点を考慮すると良いでしょう。
用途: 何を静電気から守りたいのか?(電子部品、粉体、人体など)
必要な性能レベル: どの程度の帯電防止性能が必要か?(表面抵抗値など)
持続性: 効果は一時的で良いか、長期間必要か?
環境: 使用する場所の湿度や温度は?クリーンルームなど清浄度が求められるか?
コスト: 予算はどのくらいか?

※まとめ
静電気は、身近な不快感だけでなく、製品の品質低下、電子機器の故障、さらには火災や爆発といった重大な事故につながる可能性を秘めています。しかし、帯電防止剤の仕組みを理解し、用途に適した製品を正しく選択・使用することで、これらのリスクを効果的に低減することができます。
今回ご紹介した帯電防止剤の種類と特徴を参考に、皆さんの職場や生活環境に潜む静電気の問題を見直し、適切な対策を検討してみてはいかがでしょうか。

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