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2025.10.29 静電気対策資材

【導電剤とは?】電気を操る革新素材の魅力

静電気対策の鍵!導電剤の種類と選び方、おすすめ製品まで徹底解説
製造現場における歩留まり低下、装置の誤動作、そして最悪の場合には火災事故まで。
これらのリスクの陰には、しばしば『静電気』の問題が潜んでいます。
この目に見えない現象は、現代の工業プロセスにおいて無視できない管理対象となっています。

① 導電剤は静電気対策に不可欠!でも種類が多くて…?

そこで注目されるのが「導電剤」です。
導電剤は、プラスチックやゴム、塗料といった、本来電気を通しにくい素材に混ぜたり塗ったりすることで、
電気を通しやすくする性質を与えるための添加剤です。
これにより、静電気を安全に逃がしたり、電気回路の一部として機能させたりすることができます。

しかし、一口に導電剤と言っても、その種類は多岐にわたります。
材料に混ぜ込む「練り込み型」、表面に塗る「コート剤」、接着機能も持つ「接着剤」、印刷できる「インキ」など、形態も様々です。
さらに、使われる材料も、それ自体が電気を通す「導電性ポリマー」や、樹脂などに混ぜ込む「導電性フィラー」(カーボン系、金属系、金属酸化物系など)があります。
重要なのは、これらの導電剤はそれぞれ特性が大きく異なるため、目的や用途に合わせて最適なものを選ぶ必要があるということです。
間違った選択をしてしまうと、十分な静電気対策効果が得られなかったり、製品の性能を損ねてしまったりする可能性があります。

② なぜ?:

どうして導電剤が必要で、なぜ選ぶことが重要なのか?

1. 導電剤の基本的な働き
まず、なぜ導電剤が必要なのでしょうか?それは、導電剤が主に以下の2つの重要な働きをするからです。

(1)電気を流す経路を作る: 電子回路基板上の配線のように、電気(電流)がスムーズに流れるための道筋を形成します。
(2)静電気を逃がす: 静電気は、摩擦などによって物体表面に電気が溜まってしまう現象です。
導電剤を静電気を帯びやすい素材(プラスチックなど)に添加することで、溜まった静電気を速やかに地面(アース)などに逃がし、静電気による放電(ESD)や、それに伴う電子部品の破壊、ほこりの吸着といったトラブルを防ぎます。
特に、帯電防止グレードよりも素早く静電気を除去できるのが導電グレードの特徴です。

2. 多種多様な導電剤とその特性の違い
では、なぜ「選ぶこと」が重要なのでしょうか?
それは、前述の通り導電剤には様々な種類があり、それぞれに得意なこと(メリット)と不得意なこと(デメリット)があるからです。
元のコラムで紹介されている主な導電剤の種類とその特徴を見てみましょう。

練り込み型導電剤:
樹脂やゴムに導電性粒子(カーボンブラックや金属粉末など)を混ぜ込んで成形します。
メリット: 材料全体が均一に導電性を持ち、摩耗に強く、大量生産に向いています。
デメリット: 金属ほどの高い導電性は得にくく、導電性粒子を多く入れると素材本来の強度などが低下することがあります。材料コストも高めになります。

導電性コート剤:
液体状で、様々な素材(プラスチック、ガラス、フィルムなど)の表面に塗ることで導電性を与えます。
メリット: 多様な素材に使え、柔軟性や透明性を保ちやすく、塗る量などで導電性を調整できます。比較的簡単に加工できます。
デメリット: 表面をコーティングするため、摩耗や剥がれに弱く、広い面積に均一に塗るのが難しい場合があります。溶剤を含むものは環境への配慮が必要です。

導電性接着剤:
物をくっつける接着剤の機能と、電気を通す導電性の両方を持ち合わせています。
メリット: はんだ付けが難しい低温(100℃以下)での電子部品の接合や、酸化しやすい金属(ステンレス、アルミなど)の接着に使えます。一度固まると熱で溶けないため、部品がずれにくいです。
デメリット: 固まるのに時間がかかり、金属ほどの高い導電性は期待できません。

導電性インキ:
印刷技術(スクリーン印刷、インクジェット印刷など)を使って、回路パターンなどを形成できる導電性材料です。
メリット: 複雑な形状の導電パターンを簡単に作れます。金、銀、銅、カーボンなど様々な材料が使われます。
デメリット: 金や銀を使うと高価になります。一般的に金属コーティングより導電性は劣り、一度に厚い膜を作るのは難しいです。素材によってはインキが密着しにくい場合があります。

さらに、これらの導電剤を構成する材料にも違いがあります。

導電性ポリマー:
ポリマー(高分子)自体が電気を通す性質を持っています。(例:PEDOT:PSS、ポリピロール系など)
メリット: 透明性が高いものがあり、薄い膜でも効果を発揮します。湿度に影響されにくく安定しており、軽くて柔軟な材料が作れます。
デメリット: 金属ほどの高い導電性はなく、高温や紫外線などで性能が劣化することがあります。
用途例: 帯電防止コーティング、透明電極、太陽電池など。

導電性フィラー:
樹脂などに混ぜ込むことで導電性を与える粉末や繊維状の物質です。(例:カーボンブラック、カーボンナノチューブ、銀粉、銅粉、酸化スズなど)
メリット: 金属系フィラーは非常に高い導電性を持ちます。材料の種類が多く、目的に応じて選べます。電磁波シールドなど幅広い用途があります。
デメリット: 金属系は重くなる傾向があり、たくさん混ぜ込む必要がある場合もあります。金や銀以外は酸化して導電性が落ちることがあります。
用途例: 電極、導線、発熱体、静電気防止材、電磁波シールド材など。

このように、導電剤の種類や材料によって、導電性のレベル、透明性、柔軟性、耐久性、加工方法、コストなどが大きく異なります。
そのため、何を目的とし、どのような性能が必要なのかを明確にして、最適な導電剤を選ぶことが、期待通りの効果を得るために不可欠なのです。

③ 対策は?:目的に合った導電剤を選ぶためのステップ

では、具体的にどのようにして最適な導電剤を選べばよいのでしょうか?以下のステップで考えてみましょう。
目的と要求性能の明確化:
何のために導電性が必要ですか? (例: 静電気を逃がしたい、電磁波を遮断したい、回路を作りたい)
どのくらいの導電性が必要ですか? (例: 完全に電気を通すレベル? 静電気をゆっくり逃がせれば良いレベル?) 電気抵抗値(Ω:オーム)の目標値を設定します。
どのような環境で使いますか? (例: 高温・低温、多湿、屋外、摩耗しやすい場所)
他に重要な性能はありますか? (例: 透明であること、曲げられること、特定の薬品に耐えること、コスト)

導電剤の種類の検討:
上記の目的と要求性能を踏まえ、各導電剤(練り込み、コート、接着、インキ)と材料(ポリマー、フィラー)の特徴(メリット・デメリット)を比較検討します。
基材(導電性を付与したい素材)との相性も重要です。例えば、練り込み型は熱可塑性樹脂には適していますが、ガラスには使えません。コート剤は幅広い素材に使えますが、密着性が問題になることもあります。

具体的な製品の調査と比較:
候補となる導電剤の種類が決まったら、メーカーのカタログやウェブサイトで具体的な製品情報を調べます。性能データ(表面抵抗値、体積抵抗率など)、加工条件、安全性情報などを確認し、比較検討します。

試作・評価:
可能であれば、少量のサンプルで試作を行い、実際の使用条件で性能を評価します。導電性だけでなく、耐久性や外観なども確認しましょう。

④どんなものがあるの?

静電気対策におすすめの製品紹介
導電剤は様々な製品に応用され、私たちの身の回りの静電気対策に貢献しています。
ここでは、静電気対策を目的とした一般的な製品の例を、ご紹介します。
静電気対策の基本は、「発生させない」「溜めない」「速やかに逃がす」ことです。
これらの考え方に基づいた製品が多数あります。
1. 静電気を「溜めない」「速やかに逃がす」ための製品(導電性・帯電防止性材料を利用)

これらは、導電剤(カーボンフィラーや導電性ポリマーなど)を利用して作られており、発生した静電気を安全にアース(大地)などに逃がす役割を果たします。
導電性・帯電防止性 床材/マット:
作業スペース全体の静電気対策に。人や台車から発生する静電気を床に逃がします。
例:アキレス「エレフィールフロアー」、タキロンシーアイ「タキロンシーアイ制電性ビニル床シート」、ミヅシマ工業「導電ゴムシート」

導電性・帯電防止性 袋/フィルム/シート:
静電気に弱い電子部品や粉体などを保護・包装する際に使用します。
例:三菱ケミカル(カーボンマスターバッチ練込フィルム)、大倉工業「オークラ帯電防止袋」、テクノスタット工業「STAT-3Sシリーズ」

導電性コンテナ/ボックス/トレー:
電子部品や基板の保管・運搬に使用し、静電気による破壊を防ぎます。
例:三甲「サンボックス導電タイプ」、岐阜プラスチック工業「リスボックス導電性」、DICプラスチック「導電性コンテナ」

導電性作業椅子/作業台:
作業者が帯電するのを防ぎます。アースへの接続が必要です。
例:アズワン(各種メーカー取扱い)、エレクター、サカエ

導電性手袋/指サック/履物:
作業者自身が静電気の発生源とならないように、身に着けるアイテムです。
例:ショーワグローブ「制電ビニローブ」、ミドリ安全「カーボン指サック」「エレパスシリーズ(靴)」

リストストラップ/アース線/アースマット:
作業者の身体に溜まった静電気を確実にアースに逃がすための基本的なアイテムです。
例:ホーザン、エンジニア、白光、ベッセル

製品選択のポイント:
どの製品を選ぶかは、対策したい場所(作業台、床、保管棚など)、対象物(電子部品、粉体、人体など)、必要な静電気対策のレベル(どの程度の抵抗値が必要か)、作業環境(クリーンルームなど)によって異なります。
複数の対策を組み合わせることも重要です。

※まとめ
導電剤は、目に見えないところで私たちの生活や産業を支え、厄介な静電気トラブルから守ってくれる重要な材料です。
練り込み型、コート剤、接着剤、インキといった様々な形態があり、導電性ポリマーや各種フィラーといった材料が用いられています。
それぞれの特性を理解し、目的や用途に合わせて最適な導電剤やそれを利用した製品を選ぶことが、効果的な静電気対策の第一歩です。このコラムが、導電剤への理解を深め、適切な静電気対策を進める一助となれば幸いです。

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