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2025.10.24 製袋についての豆知識

【真空包装とは?】製品の寿命を最大化する保護技術

工業製品の品質を守る真空包装(真空パック) — その効果・方法から注意点まで

はじめに:真空包装(真空パック)とは何か?
真空包装とは、製品を入れた袋から内部の空気を吸引・脱気し、密封することで内部を真空に近い状態にする包装技術です。もともとは食品の鮮度を保つためによく知られていますが、工業製品の保管や輸送においても、その優れた保護能力から重要な役割を果たしています。
このコラムでは、工業分野における真空包装の絶大な効果から、導入前に知っておくべき注意点、そして安全に運用するための対策までを詳しく解説していきます.

①なぜ有効なのか?真空包装がもたらす5つのメリット

工業製品に真空包装を適用することで、単に「空気を抜く」以上の、多岐にわたるメリットが得られます。

1. 酸化防止による品質維持
空気中の酸素が製品に触れることで「酸化」が起こります。金属の錆びや樹脂の変色・劣化は、主に酸化が原因です。真空包装は、この原因となる酸素を物理的に除去するため、製品の酸化反応を強力に抑制し、長期にわたって製造時と変わらない品質を維持します。

2. 湿気とホコリからの完全な保護(防湿・防塵)
精密な電子部品や光学レンズにとって、湿気や微細なホコリは性能低下や故障を招く大敵です。真空包装は製品をフィルムで完全に密封するため、外部からの湿気の侵入をシャットアウトし、製品をサビや腐食から守ります。
また、クリーンルームで製造された製品を、塵や埃から完全に隔離したまま輸送・保管することが可能です。

3. 微生物の繁殖抑制
カビや好気性細菌(酸素を好む細菌)の多くは、繁殖のために酸素を必要とします。
真空状態にすることでこれらの微生物の活動を抑制できるため、バイオ関連製品や医療機器、薬剤などを清浄な状態に保つのに効果的です。

4. 保管・輸送コストの削減
袋内の空気を抜くことで包装全体の体積が小さく(コンパクトに)なります。
これにより、保管に必要なスペースを削減できるほか、一度に輸送できる量が増えるため、物流コストの低減にも繋がります。

5. 製品の機械的保護
包装材が製品の形状に沿ってぴったりと密着するため、輸送中の振動や衝撃による製品の動きを抑制できます。これにより、製品同士の衝突や箱内部でのガタつきによる損傷を防ぐ効果も期待できます。

②広がる用途 — どのような製品に最適か?

真空包装は、その優れた保護性能から、以下のような多種多様な工業製品に適用されています。

電子部品・半導体
プリント基板、実装基板、半導体ウェハーなど。湿気やホコリ、そして後述する静電気に非常にデリケートなため、真空包装による保護が不可欠です。

自動車・機械部品
エンジン部品やベアリング、ギアなど。長期保管時の錆びや腐食を防ぐために利用されます。特に海外への輸出など、輸送に時間がかかる場合に効果を発揮します。

化学・樹脂製品、金属微粒子
湿気によって固まったり変質したりする粉末状の化学薬品や、酸化しやすい銅・銀・ニッケルなどの金属粉末の品質保持に最適です。

医療機器・医薬品
注射器やカテーテル、インプラント製品など。滅菌後の清浄度を維持し、外部からの汚染を防ぐ目的で厳重に真空包装されます。

レンズ・カメラ部品
光学レンズやセンサー部品など。微細なホコリや湿気による曇りを防ぎ、製品の性能を保証するために用いられます。

③導入前の注意点 — 真空包装のデメリット

多くのメリットがある一方で、真空包装にはいくつかの注意点やデメリットも存在します。
導入を検討する際は、これらを十分に理解しておく必要があります。

コストの増加
真空包装を行うためには、真空ポンプを備えた専用の「真空包装機(真空シーラー)」や、ガスバリア性の高い専用の包装フィルムが必要です。そのため、一般的な包装に比べて初期投資やランニングコストが増加する傾向があります。

包装プロセスの複雑化
「製品を袋に入れる → 空気を抜く(脱気) → 口を閉じる(シール)」という工程が加わるため、生産ラインの設計や管理が複雑になり、作業時間も長くなる可能性があります。

製品への物理的な影響
真空にする際の圧力(大気圧)によって、製品が圧迫されます。柔らかい材質の製品や、中空構造を持つ部品、精密な形状の製品は、その圧力で変形してしまう可能性があります。事前のテストが重要です。

【注意点】静電気の発生
真空包装のプロセスにおいて、特に注意すべきが「静電気」のリスクです。真空状態は静電気が非常に発生・帯電しやすい環境を作り出し、これが電子部品などに致命的なダメージを与えることがあります。

④真空包装と静電気リスクへの対策

なぜ真空で静電気が危険なのか?
通常、空気中には水分が含まれており、発生した静電気を自然に逃がす役割を果たしています。しかし、真空包装ではその水分ごと空気を抜き去るため、電気の逃げ道がなくなり、発生した静電気が製品やフィルムの表面に溜まり続けてしまうのです。
この溜まった静電気が一気に放電(静電気放電:ESD)すると、人間が感知できないほど小さな放電でも、半導体などの精密な電子回路は一瞬で破壊されてしまいます。

静電気から製品を守るための具体的な対策
このリスクを回避するためには、以下の対策が不可欠です。

帯電防止・静電気シールド包装材を選ぶ
静電気が溜まりにくい「帯電防止フィルム」や、外部からの静電気も防ぐ「静電気シールド袋(アルミ袋など)」といった、静電気対策機能を持つ専用の包装材を使用してください。

作業環境を整備する
イオナイザー(除電器)を設置し、製品や作業空間の静電気を中和する。
作業者はリストストラップを着用し、人体に溜まった静電気をアースへ逃がす。
導電性のマットや床を導入し、常に静電気が溜まらない環境を作る。
作業場の湿度を40%~60%に保つことも有効です。

設備のアース(接地)を徹底する
真空包装機や作業台は、必ず適切にアース(接地)を取り、設備自体が帯電しないようにしてください。

静電気対策に有効な製品(一般例)
これらの対策製品は、専門のメーカーや商社から入手できます。

静電気対策包装材:
三菱ケミカル株式会社、積水化学工業株式会社  株式会社ケンエーなど

イオナイザー(除電器):
株式会社キーエンス、シシド静電気株式会社 など
作業環境対策品: ホーザン株式会社、アズワン株式会社 株式会社ケンエーなど

まとめ:真空包装を効果的に活用するために
真空包装は、製品を酸化や湿気、ホコリから守り、その品質を長期間維持するための極めて強力なツールです。
しかしその一方で、コストや製品への影響、そして特に重大な「静電気リスク」といった注意点も存在します。

真空包装のメリットを最大限に引き出し、安全に運用するためには、これらの特性とリスクの両方を正しく理解し、自社の製品や目的に合った装置・包装材を選定し、適切な作業環境を構築することが何よりも重要です。

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