2024.10.22
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導電材の種類
導電剤とは?
導電剤は、物質に電気を通す性質を与えるための添加剤です。電子機器、複合材料、塗料など、様々な分野で利用されています。
導電剤とは、電気を流しやすくする性質を持つ物質、またはその物質を混ぜ込んだ製品や塗布する製品のことを指します。より具体的には、電気抵抗が小さく、電流をスムーズに通過させることができる物質です。
導電剤の働き
- 電気を流す経路を作る: 電気回路の中で、電気が流れる経路を形成します。
- 静電気を逃がす: 静電気を帯びやすい素材に添加することで、静電気を大地に逃がし、静電気によるトラブルを防ぎます。
※帯電防止グレードよりも素早く静電気を逃がすことが可能です。
導電剤の種類について
導電剤はどのように分けられるのでしょうか?
練りこみ型導電剤
練り込み型導電材は、樹脂やゴムなどの基材に、導電性粒子(カーボンブラック、金属粉末など)を均一に分散させ、成形することで作られます。
メリット
- 均一な導電性: 材料全体に導電性フィラーが分散されるため、均一な導電性が得られます。
- 成形の自由度: 通常のプラスチック成形技術を用いて様々な形状に加工できます。
- 耐久性: 表面塗布型と比べて、摩耗や剥離に強い特性を持ちます。
- コスト効率: 大量生産に適しており、コストを抑えられる可能性があります。
デメリット
- 導電性の制限: 金属ほどの高い導電性は得られにくく、フィラーの量を増やすと機械的特性が低下する傾向があります。
- 材料コスト: 導電性フィラーの添加により、通常のプラスチックよりも材料コストが高くなります。
導電性コート剤
液状で、基材に塗布することで導電性を付与します。
メリット
- 多様な基材への適用: プラスチック、ガラス、フィルムなど、様々な材料に導電性を付与できます。
- 柔軟性: 基材の柔軟性を損なわずに導電性を付与できます。特に導電性ポリマー系は屈曲性に優れています。
- 透明性: 適切な材料と塗布方法を選択することで、高い透明性を維持できます。
- 調整可能な導電性: 塗布量や材料の選択により、広範囲の表面抵抗値を実現できます。
- 簡便な加工: 塗布や印刷など、比較的簡単な方法で導電性を付与できます。
デメリット
- 耐久性の課題: 摩耗や剥離により、導電性が低下する可能性があります。
- 均一性の確保: 大面積に均一に塗布することが難しい場合があります。
- 導電性の限界: 金属などの導体と比較すると、導電性に限界があります。
- 環境影響: 一部の導電性コート剤は、溶剤を含むため、環境への配慮が必要です。
- コスト: 高性能な導電性材料を使用する場合、コストが高くなる可能性があります。
ケンエーで取り扱いのある導電袋または導電フィルムと、それに使用されている導電剤の種類について
<袋タイプ>
<フィルムタイプ>
<シートタイプ>
<スポンジタイプ>
導電剤について
上記にて様々な種類の導電材について挙げましたが、導電剤自体にも下記のような分類があります。
- 導電ポリマー
- 導電フィラー
導電性ポリマー
導電性ポリマーとは、導電性高分子とも呼ばれ、自体が導電性の特性を持っており、そのまま製品の成分として使用されます。
導電性ポリマーの種類
- ポリチオフェン系
- ポリアセチレン系
- ポリアニリン系
- ポリピロール系
特長
- ポリマー自体が固有の導電性を持つ
- 高い透明性を持つものがある
- 薄膜での帯電防止性能を発現できる
- 湿度依存性の少ない安定した特性を示す
メリット
- 高い透明性を実現可能
- 薄膜での帯電防止性能を発現できる
- 湿度依存性の少ない安定した帯電防止特性を示す
- 耐溶剤性、耐ブロッキング性が良好
- フィラーを必要としないため、軽量な導電材料を作製できます
- ポリマーの特性を活かし、柔軟性や成形性に優れた導電材料を作製できます
デメリット
- 導電性が金属系フィラーほど高くない
- 環境要因(高温、湿度、紫外線)により性能が低下する可能性がある
- 機械的耐久性が金属導体より劣る
用途
導電性フィラー
導電性フィラーは樹脂に導電性を付与するために加える物質で、補助的な役割をし製品に使用されます。
導電性フィラーの種類
具体例
- 金属系: 銀、銅、ニッケル、錫、アルミニウムなどの粉末や繊維
- 炭素系: カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブなど
- 金属酸化物系: 酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛など
特長
- 樹脂に添加して導電性を付与する物質
- 金属系の場合、自由電子の移動により導電性が発現する
- 導電ポリマーよりも高い導電性を示す
メリット
- 金属系フィラーは非常に高い導電性を示す
- 用途に応じて幅広い選択が可能(カーボン系・金属系・金属酸化物系等)
- 電磁波シールド材やプリント回路など、多様な用途に適用可能
デメリット
- 金属系フィラーは比重が高く、複合材料が重くなる傾向がある
- 高充填が必要な場合がある
- 金、銀以外の金属は酸化により導電性が劣化する可能性がある
- 金属被覆系フィラーは製造工程が複雑で高価になりやすい
用途
- 抵抗値の低いものは電極や導線、接点材料に使用
- 抵抗値の高いものは電熱線や発熱体、静電気防止用に使用
- 電磁波シールド材やプリント回路など、より広範な用途に適用可能
代表的な導電性ポリマーは?
(1) PEDOT:PSS
ポリチオフェンの導電性ポリマーであり、高い導電性と優れた安定性、透明性を持ちます。表面抵抗値:10の2乗Ω~10の11乗オームで調整可能。
PEDOT:PSSとは?
PEDOT:PSSは、有機エレクトロニクス分野で注目されている導電性高分子の一種です。ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸という2つの高分子が複合した材料で、その独特な特性から様々な応用が期待されています。
PEDOT:PSSの特長
- 高い導電性: 電気を通しやすい特徴があります。
- 透明性: 薄膜状にすると透明で、透明な電極などを作製できます。
- 柔軟性: フレキシブルな電子デバイスへの応用が期待できます。
- 安定性: 空気や湿気に比較的安定しており、長期的な使用にも耐えられます。
- 加工性: 様々な方法で加工できます。
PEDOT:PSSのメリット
- 柔軟性: フレキシブルな電子デバイスの開発が可能。
- 透明性: 透明な電子デバイスの開発が可能。
- 加工性: 設計の自由度が高い。
PEDOT:PSSのデメリット
- 環境安定性: 長期的な環境安定性の研究が必要な場合があります。
PEDOT:PSSの主な用途
- 帯電防止剤: プラスチックや紙などの表面にコーティング。
- 導電性接着剤: 電子部品を接着する際に、電気的な接続を実現。
- エネルギー貯蔵デバイス: バッテリーやスーパーキャパシタの電極材料。
高透明静電気除去テープ(剥離フィルム付)|スマートクリアテープ
(2) アキレス様 STポリ
ポリピロール系の導電ポリマーを使用しており、以下のような特徴があります。
- 薄膜コート・透明な導電化
- ブリードアウトや脱落のない、安定した導電性能
- 幅広い材質・形状にフレキシブルに対応
- 環境に優れた特性
- ラミネート・印刷・粘着加工等の後加工に対応
導電加工技術『STポリ』 | 静電気対策技術紹介 | 電機・電子 | 製品情報 | アキレス
代表的な導電性フィラーは?
(1) カーボン系フィラー
特徴
- 形状:粒子状(カーボンブラック)、繊維状(炭素繊維、VGCF、カーボンナノチューブ)など様々
- 体積固有抵抗率:10^-2~10^-1 Ω・cm程度
メリット
- 樹脂への分散性が良好
- 比較的安価
- 軽量
- 化学的安定性が高い
- 幅広い用途(導電助剤、二次電池、燃料電池の触媒担持体など)
デメリット
- 金属系フィラーと比較して導電性が劣る(数百~数千万倍の差)
- 繊維状フィラー(特に小径のもの)は樹脂への均一分散が難しい
- 高添加率が必要な場合がある(樹脂の機械的特性に影響を与える可能性)
用途
- 導電袋などの静電気対策資材
- 導電性プラスチック成形体
- 導電性塗料や接着剤
- 電磁波シールド材 等
カーボン練り込み導電袋(株式会社ケンエー)
カーボンナノチューブ:STAT-CNT(株式会社ケンエー)
(2) 金属酸化物導電剤
特徴
- 主な種類:酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズなど
- これらの基材にアンチモンをドープすることで導電性を発現
※アンチモンとは?
アンチモンは、導電性酸化物の性能を向上させるためにドープされる元素で、主に金属酸化物の導電性を向上させるために使用されます。
メリット
- 透明性:酸化スズ系は透明な導電性コーティングを形成可能
- 耐熱性・耐薬品性に優れる
- 湿度による抵抗値の変動が少ない
- 導電性の調整が可能
デメリット
- 比較的高価
- ドープ材として使用されるアンチモンの安全性の懸念
- 透明導電膜用は特に高価な傾向
用途
代表的な金属酸化物導電剤
アンチモンドープ酸化スズ(ATO)は、高い導電性、透明性、耐薬品性を備えた導電剤です。