2024.10.22
ラミネートについて
ラミネートフィルムとは?
ラミネートは、複数の異なる種類のフィルムを貼り合わせて一枚のフィルムを作る工程を指します。この技術は、各フィルムの特性を組み合わせることで、より高機能な袋を製造するために使用されます。ラミネート袋は、肉眼では1枚に見えますが、実際には複数の種類のフィルムが貼り合わされた構造になっています。

ラミネートフィルムで主に付与される機能性
ラミネート加工により、以下のような効果を高めることができます
- 防湿性
- ガスバリア性
- 遮光性
- 耐熱性
- 静電気防止
- 真空適性
- 強度
ラミネートフィルムの用途
- 精密機器の包装: 電子部品や機械製品の保護に使用されます。
- 化学製品の包装: 薬品や化学物質の保管・輸送に適しています。
- 金属部品の防錆包装: 金属製品の錆び防止に効果的です。
- 建材の保護: 湿気や汚れから建材を守ります。
- 工業用原料の保管: 粉体や粒状の原料の保管に使用されます。
ラミネート袋の構造例
ラミネート袋の構造は、複数の異なる素材のフィルムを貼り合わせて作られています。一般的なラミネート袋の構造は以下のようになっています
基本構造
ベース層: 一番外側に位置し、袋の「骨格」となる層です。
主な機能: 機械的強度、バリア性、耐熱性、印刷適性
使用される素材: ポリエステル(PET)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリアミド(PA)など
中間層 (必要に応じて)
ベース層とシーラント層の間に位置します。
主な機能: ラミネートフィルム全体の補完機能
使用される素材: アルミニウム箔、ポリアミド系フィルムなど
シーラント層
一番内側に位置し、包装袋の内面となります。
主な機能: 熱シール性能、内容物との適合性
使用される素材: ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など
※シーラント層の性能が不十分な場合、以下の問題が発生する可能性があります。
- 内容物の漏れ: 包装内容物が漏れてしまい、品質低下や衛生上の問題を引き起こす可能性があります。
- 外気の影響: 湿気や酸素が侵入し、内容物の品質が劣化したり、異臭が発生したりする可能性があります。
- シール不良: シール不良により、製品の外観が損なわれたり、開封しやすくなったりする可能性があります。
2.ラミネートの方法

主に下記のようなラミネート方法の種類があります。
- ドライラミネート 接着剤を基盤に塗布し乾燥させ、熱と圧力で貼り合わせる
- ウェットラミネート 接着剤を基盤に塗布し貼り合わせ、乾燥させる 等
- 押し出しラミネート 接着剤を使用せず、熱と圧力で張り合わせます。
- ノンソルラミネート 無溶剤接着剤を、粘度を下げた状態で基盤に塗り、貼り合わせる
- 蒸着ラミネート アルミニウムなどの金属を蒸着させたフィルムを用いるラミネート加工方法です。
ドライラミネート
ドライラミネートは有機溶剤で希釈した接着剤を基材表面に塗り、乾燥機で溶剤を蒸発乾燥させ、別の基材と貼り合わせる方式です。接着剤を使用するラミネートで広く使われている方式です。
メリット
- 高い生産性と効率性を持つため多品種少量生産にも向いています。
- 接着強度に優れており、アルミニウムや、銅箔などの基材にも使用できます。
- 耐熱性や耐薬品性などの機能を付与することができます。
ドライラミネートのデメリット
- 耐水性や耐熱性が低い: 熱や水に弱いため、長期的な耐久性や耐水性が求められる用途には不向きな場合があります。
- 粘着剤の残留: 長期保管すると、粘着剤が変色したり、被着物が変色したりする場合があります。
用途
- アルミ防湿袋
- 軽包装資材
- 医療用包材
- レトルト食品、非常食品、ボイル食品などの包材
- フレキシブルプリント基板用フィルム
- 接着剤、バリアフィルム
ウェットラミネート
ウエットラミネートとは、接着剤を基盤に塗布し貼り合わせ、乾燥させるラミネート方法です。
特徴
- 水溶性の接着剤を使用します
- 接着剤を基材に塗布した直後に、第二の基材を圧着し、溶媒を乾燥させてラミネートを完成させます
- 基材のうち少なくとも一方が溶媒を透過する性質を持つ必要があります
メリット
- 溶剤が含まれていない水性の接着剤を使用するため、環境への負荷が少ないです。
- 生産性に優れており、低コスト。
- ウェットラミネートによるラミネートは、表面に均一な光沢と透明性を付与することが可能です。
- ラミネートフィルムが素材を覆うことにより、防水性や耐久性を向上させることができます。
デメリット
- 乾燥時間が必要: 溶媒を乾燥させる工程が必要なため、加工時間が長くなる傾向があります。
- 基材の制限: 溶媒を透過する性質を持つ基材が必要なため、使用できる素材に制限があります。
- 耐水性の課題: 水溶性接着剤を使用するため、完全な防水性が求められる用途には適さない場合があります。
- 強度の制限: ドライラミネートや押し出しラミネートと比較して、接着強度が劣る可能性があります。
用途
- 印刷物の保護: 書籍のカバーや雑誌の表紙などの印刷物を保護するために使用されていることがあります。
- 紙製包装材: 吸水性のある紙製の包装材に防水性や耐久性を付与するのに適しています。
※ドライラミネートとウェットラミネートの違い
ウェットラミネート加工は、水系の接着剤をコーティングしながら貼り合わせを行い、その後乾燥させる方法です。ドライラミネート加工は、様々な材料を接着剤を用いて貼り合わせる加工です。コーティング後に他の部材とラミネートすることも可能です。接着剤は溶剤系、水系など様々な材料を用途に応じて使い分けを行います。
2-3.押し出しラミネート
接着剤を使用せず、高温で溶解した熱可塑性樹脂を直接押し出し、溶けた樹脂を素材の間に流し込み、冷却して貼り合わせるラミネート方法です。
メリット
- 残留溶剤がない: 接着剤を使用しないため、残留溶剤がありません。
- 高速加工: ドライラミネートと比較して加工速度に優れています。
- コスト効率: 安価で大量生産に適しています。
- 環境負荷が低い: 接着剤を使用しないため、環境への影響が少ないです。
デメリット
- 耐熱性の制限: 耐熱性はドライラミネートと比べて普通レベルです。
- 少ロット対応の難しさ: 少ロット多品種化への対応には工夫が必要です。
- 接着強度: 接着およびシール強度は普通レベルで、ドライラミネートほど優れていません。
用途
- アルミ防湿袋
- 食品包装材
- 容器の蓋材(シーラント)
- 産業資材向けの重包装用包材
ノンソルラミネート
無溶剤接着剤を、粘度を下げた状態で基盤に塗り、貼り合わせるラミネート方法です。ノンソルラミネートは「ノンソルベントラミネート」の略で、無溶剤(non-solvent)を指し、有機溶剤を使用しないラミネート方式です。
メリット
- 環境負荷が低い: CO2やVOCガスの排出が少なく、環境に優しい加工方法です。
- 残留溶剤がない: 有機溶剤を使用しないため、残留溶剤による内容物の品質低下の懸念がありません。
- エネルギー効率が良い: 乾燥工程が不要なため、ドライラミネートと比較してエネルギー消費量が少なく、CO2排出量削減につながります。
- 高速加工が可能: 乾燥工程がないため、比較的高速で加工できます。
- 多様な素材に対応: 様々なラミ構成に対応可能で、食品包装やボイル可能フィルム、アルミ蒸着フィルムなど幅広い用途に使用できます。
デメリット
- 接着強度: 一部の用途では、ドライラミネートと比較して接着強度が劣る場合があります。
- 設備投資: 専用の設備が必要なため、初期投資コストがかかる場合があります。
- 適用限界: 一部の特殊な素材や極端に高い接着強度が必要な用途には適さない場合があります。
用途
- スナック菓子包装、液体スープなどの包材
- 医薬品包材など
蒸着ラミネート
蒸着ラミネートとは、アルミニウムなどの金属を蒸着させたフィルムを用いる加工方法です。
特徴
- アルミニウムなどの金属を高真空状態で蒸発させ、フィルム表面に薄い金属膜を付着させる加工方法です。
- 非常に薄い金属層(通常100nm以下)を形成できます。
メリット
- 優れたバリア性: ガスバリア性、防湿性、保香性に非常に優れています。紫外線や赤外線の遮断効果もあります。
- 軽量性: アルミ箔と比較して非常に薄く、軽量です。
- 柔軟性: アルミ箔単体のシートよりも柔軟性が高いです。
- コスト効率: アルミの使用量が少ないため、アルミ箔よりも省資源・省コストです。
デメリット
- バリア性の限界: アルミ箔と比較すると、防湿性や遮光性がやや劣ります。
- 耐久性: 金属層が非常に薄いため、傷つきやすい場合があります。
- リサイクル性: 複合材料であるため、リサイクルが難しい場合があります。
補足情報:有機溶剤・無機溶剤とは?
上記ラミネートの方法で、有機溶剤・無機溶剤という言葉が出てきました。
有機溶剤
- 組成: 炭素を含む有機化合物で構成されています。
- 例: シンナー、トルエン、アルコール類など。
特徴
- 油を溶かす作用が強い。
- 揮発性が高い。
- 刺激臭がある。
デメリット
- 人体に有害な影響を与える可能性がある。
- 中毒症状を引き起こす危険性がある。
- 環境への負荷が大きい。
無機溶剤
- 組成: 炭素を含まない無機化合物で構成されています。
- 例: リン酸チタニアなど。
特徴
- 水に対して親和性がある(親水性)。
- 人体への影響が少ない。
- 環境負荷が低い。
メリット
- 消臭・抗菌効果が期待できる。
- 防汚効果がある。
- 静電気を溜めにくい。
ラミネートで主に使用される基材

ポリエチレン(PE)ラミネート
耐水性、柔軟性に優れ、食品包装によく使用されます。
ポリエチレンテレフタレート(PET)ラミネート
透明性、ガスバリア性が高く、飲料ボトルや食品トレーなどに使われます。
ナイロンラミネート
強度、耐熱性が高く、真空パックやレトルトパウチなどに使用されます。
アルミラミネート
ガスバリア性、遮光性が高く、食品の鮮度保持や医薬品包装に適しています。
PBTラミネート
耐薬品性・耐熱性等機械的特性に優れています。特に産業業界で注目されています。
ラミネートの選択基準
ラミネートを選ぶ際には、以下の点を考慮する必要があります。
- 包装する内容物: 食品の種類、形状、重量など
- 必要なバリア性: ガスバリア性、水蒸気バリア性、遮光性など
- 耐熱性: 内容物の殺菌や加熱処理を行う場合
- 耐薬品性: 内容物が酸性やアルカリ性の場合
- 印刷適性: 印刷する必要がある場合
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