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2025.10.30 放電技術と空気浄化の豆知識

なぜポテチはパリパリ?コーヒーは香り高い? ガスバリア袋のスゴい世界

はじめに:見えない「ガス」を制する魔法の袋

開けたばかりのポテトチップスがいつもパリパリなのはなぜでしょう?
買ってきたコーヒー豆が、封を切るまで豊かな香りを保っているのはなぜでしょう?
その秘密は、製品そのものではなく、それを包んでいる「袋」に隠されています。
一見するとただの袋ですが、その内側では、私たちの目には見えない「気体(ガス)」の侵入や流出を防ぐための、熾烈な戦いが繰り広げられています。
この、食品の鮮度や工業製品の品質を守る「バリア(障壁)」の役割を果たす超高性能な包装材が、今回のテーマである「ガスバリア袋」です。
このコラムでは、ガスバリア袋がなぜ必要なのか、どのような仕組みでガスを遮断しているのか、
そして用途に合わせた選び方までを分かりやすく解説します

①【主文】ガスバリア袋とは、酸素や水蒸気といった、目には見えない気体(ガス)の出入りを極限まで抑える特殊な機能を持つ包装材であり、内容物の『酸化』『吸湿』『香りの劣化』などを防ぎ、その品質や鮮度、性能を長期間維持するための『小さな保護空間』を作り出す技術です。

結論から言うと、ガスバリア袋の役割は、袋の内側と外側を「ガス的に」完全に切り離し、袋の中に製品にとって理想的な環境を作り出し、維持することにあります。
普通のポリ袋では、目に見えない分子レベルの隙間から、空気中の酸素や水蒸気が少しずつ侵入し、逆に製品の良い香りも外へ漏れ出してしまいます。
ガスバリア袋は、このガスの通り道を特殊な層でブロックすることで、内容物が外部環境の影響を受けるのを防ぎます。それはまるで、製品一つ一つのために用意された、オーダーメイドの小さな保護空間(シェルター)なのです。

②【理由】なぜガスバリアが必要?見えない4つの敵

では、具体的にどのような「見えない敵(ガス)」から製品を守る必要があるのでしょうか。
敵1:酸素 あらゆるものを酸化させる
空気中の約21%を占める酸素は、多くの製品にとって最大の敵です。
食品への影響: 油脂を酸化させて風味を落とし(油焼け)、ビタミンなどの栄養素を破壊し、変色やカビの原因になります。
工業製品への影響: 金属部品を錆びさせ、電子部品の性能を劣化させます。医薬品や化粧品の成分を変質させることもあります。
敵2:水蒸気 湿気で製品をダメにする
いわゆる「湿気」です。
食品への影響: ポテトチップスやおかき、海苔などを湿気させ、パリパリの食感を奪います。
粉末スープや砂糖などを固まらせる原因にもなります。
工業製品への影響: 電子部品や精密機器の内部で結露を起こし、ショートや腐食の原因となります。
金属部品の錆びを促進します。
敵3:香り 価値を失わせる
製品にとって重要な「香り」も、ガスの一種です。
香りの流出: コーヒー、お茶、香辛料など、香りが命の製品から、その命ともいえる香気成分が袋を通り抜けて失われてしまいます。
外部臭の侵入: 逆に、石鹸や芳香剤などの近くに置いた食品に、外の匂いが移ってしまう「匂い移り」も防ぎます。
敵4:その他のガス – 二酸化炭素、光など
二酸化炭素: 炭酸飲料の炭酸が抜けたり、逆にキムチなどの発酵食品から発生するガスで袋が膨らんだりするのをコントロールします。
光(紫外線): ガスではありませんが、アルミ箔などを使用したガスバリア袋は光も遮断し、光による食品の劣化や変色を防ぐ効果(遮光性)も持ちます。

③【対策】どうやってガスを遮断する?ハイテク多層構造の秘密

ガスバリア袋は、一枚のフィルムでできているわけではありません。
多くの場合、それぞれ異なる機能を持つ複数のフィルムを貼り合わせた「多層ラミネート構造」になっています。
その中でも、ガスを遮断する心臓部が「バリア層」です。主に以下のような素材が使われます。
アルミ箔:
現存するとても強力なバリア材。
酸素、水蒸気、光、香りなど、ほぼ全てのガスを遮断します。
レトルト食品や医薬品など、絶対的な保護性能が求められる用途で使われます。
アルミ蒸着フィルム:
ポリエステルなどのフィルム表面に、アルミニウムを真空中で蒸発させて非常に薄く付着させたもの。
ポテトチップスの袋の内側が銀色なのはこのためです。アルミ箔よりバリア性は劣りますが、コストと性能のバランスに優れます。
透明蒸着フィルム(シリカ・アルミナ):
フィルム表面に、ガラスの主成分であるシリカ(酸化ケイ素)や、セラミックの一種であるアルミナ(酸化アルミニウム)を蒸着させたもの。透明でありながら非常に高いバリア性を持ち、中身を見せたい食品や、電子レンジで温める食品などに使われます。

④【どのような製品をつかったらよいか】用途別・効果的な組み合わせ

守りたい製品と、その敵によって、最適なガスバリア袋の選択は異なります。
コーヒー豆、お茶、ペットフードなど(酸化と香りを防ぎたい)
→ アルミ箔袋 or アルミ蒸着袋 + 脱酸素剤や窒素充填を組み合わせると効果的です。
ポテトチップス、おかき、海苔など(湿気と酸化を防ぎたい)
→ アルミ蒸着袋が最適。遮光性も保たれるため、油の酸化を防ぐ効果も高まります。
カット野菜、お惣菜など(中身を見せたい、レンジで温めたい)
→ 透明蒸着袋(シリカ・アルミナ)が活躍します。
医薬品、化学薬品、電子部品(絶対的な保護が必要)
→ アルミ箔袋が基本。湿気を嫌う電子部品には乾燥剤を同封します。

⑤【コラムの豆知識①】「ガスバリア袋」と「防湿袋」、何が違うの?

さて、ここまで「ガスバリア袋」について解説してきましたが、特に電子部品業界などでは「防湿袋」という言葉もよく使われます。
この二つは同じものなのでしょうか?
結論から言うと、ガスバリア袋という大きなカテゴリの中に、防湿袋という専門分野が含まれている、と考えるのが最も分かりやすいです。
ガスバリア袋を「果物」という大きな括りだとすれば、防湿袋は「リンゴ」のように、その中の一つの専門分野という関係になります。
つまり、高性能な防湿袋はほとんどの場合ガスバリア袋でもありますが、その逆は必ずしも当てはまりません。
両者の違いを、3つのポイントで見てみましょう。
1. 防ぐ対象(ターゲット)が違う
ガスバリア袋: 酸素、水蒸気、香りなど、あらゆる気体(ガス)を対象にします。
防湿袋: ガスの中でも特に水蒸気(湿気)を防ぐことに特化しています。
2. 主な目的が違う
ガスバリア袋: 「酸化防止」「香りの維持」など、品質を総合的に守ることが目的です。
防湿袋: 「吸湿による劣化防止(錆び、ショート、食感低下など)」が最大の目的です。
3. 性能を示す指標が違う
ガスバリア袋: 酸素透過度(OTR)と水蒸気透過度(WVTR)の両方で性能が評価されます。
防湿袋: 主に水蒸気透過度(WVTR)の数値で性能が評価されます。この数値が低いほど、高性能な防湿袋と言えます。
例えば、「酸素は通しやすいけれど、水蒸気はほとんど通さない」という特殊なフィルムも存在します。
これは優れた「防湿袋」ですが、酸素バリア性はないため、一般的な「ガスバリア袋」とは言えません。
このように、守りたい製品が何(ガス)を一番嫌うのかを正しく理解し、適切な性能を持つ袋を選ぶことが非常に重要なのです。

⑥【コラムの豆知識②】電子部品には「もう一つのバリア」が必要

電子部品を保護する場合、酸素や水蒸気といったガスから守るだけでは万全ではありません。
目に見えないもう一つの大敵、「静電気」からのバリアも同時に必要となるからです。
一般的なプラスチック製の袋は、それ自体が摩擦によって静電気を発生させやすい性質を持っています(摩擦帯電)。
もし、静電気対策が施されていないただのガスバリア袋に、デリケートな電子部品を入れて輸送すると、袋と製品が擦れることで発生した静電気が部品を破壊してしまう(静電気破壊)恐れがあります。
そこで、電子部品を包装する袋には、ガスバリア性能に加えて、『帯電防止機能』が不可欠となります。
これは、袋の表面に特殊なコーティング(帯電防止剤)を施すなどして、摩擦による静電気の発生そのものを抑制する機能です。
さらに高度なものでは、外部からの強力な静電気(雷など)の侵入を防ぐ「静電気シールド機能」を併せ持った袋もあります。
電子部品を守るためには、「ガスのバリア」と「静電気のバリア」、この2つのバリア機能を併せ持った専用の袋を選ぶことが極めて重要です。

まとめ

今回は、私たちの身近な製品の品質を守る「ガスバリア袋」について解説しました。
ガスバリア袋は、酸素・水蒸気・香りなどのガスの出入りを防ぐ「小さな保護空間」である。
主な敵は「酸化」させる酸素、「湿気」させる水蒸気、「劣化」させる香りや光。
アルミ箔や各種蒸着フィルムといった「バリア層」を挟んだ多層構造でガスを遮断する。
「防湿袋」はガスバリア袋の一種で、特に水蒸気(湿気)対策に特化したもの。
守りたい製品や目的に応じて、最適なバリア性能を持つ袋を選ぶことが重要。
次に商品を手に取るとき、その袋がどんな見えない敵から中身を守っているのかを想像してみると、
パッケージの奥深さが感じられるかもしれません。この知識が、皆様の製品保護や品質管理の一助となれば幸いです。

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