2025.10.30 放電技術と空気浄化の豆知識
目次
空気清浄機を選ぼうと製品のスペック表を眺めていると、「適用床面積」と並んで「CADR」というアルファベットと数字が記載されていることに気づきます。
「m³/min」や「cfm」といった単位が添えられていますが、この数値が何を意味し、私たちの製品選びにどう役立つのか、直感的に理解するのは難しいかもしれません。しかし、実はこのCADRこそが、その空気清浄機が持つ「実力」を客観的に示してくれる、世界共通の重要なものさしなのです。
日本で空気清浄機を選ぶときは・・・
「〇畳用」といった広さの目安や、「プラズマクラスター」「ナノイー」といった
メーカー独自の技術名に注目することが多いのではないでしょうか。
一方で、海外の製品情報などを見ると「CADR」という指標を目にすることがあります。
「CADRって何だろう?」
と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
これは、空気清浄機の性能を示す世界的な基準の一つなのですが、
日本ではあまり馴染みがないかもしれません。
このコラムでは、空気清浄機選びのキーポイントとなる「CADR」の正体と、その数値をどのように活用すればご家庭に最適な一台を見つけられるのかを、分かりやすく解説していきます。
結論から言うと、CADR(Clean Air Delivery Rate:クリーンエア供給率)とは、その空気清浄機が、汚れた空気をどれだけ速く、効率的にきれいにできるかを示した「空気清浄能力のスコア」です。
単にファンが強くたくさんの空気を送り出せる、というだけでなく、「フィルターできちんと汚染物質を除去した、きれいな空気」をどれだけ送り出せるか、という点がポイントです。そのため、CADRの数値が高い製品ほど、パワフルで高性能な空気清浄機であると判断できます。
CADRの数値は、特定の条件下で厳密なテストを行うことで算出されます。この仕組みを知ることで、数値の意味がより深く理解できます。
CADRの正体:国際的な性能基準
CADRは、米国家電製品協会(AHAM)と呼ばれる協会が定めた、世界基準の空気清浄機性能指標です。
特定の広さの試験室に、タバコの煙などの汚染物質を散布し、その濃度が空気清浄機の運転によってどれだけ速く減少するかを測定して数値を割り出します。
CADRを決める2つの要素
CADRの数値は、非常にシンプルな掛け算で成り立っています。
CADR = フィルターの除去効率 (%) × ファンの風量 (m³/min)
この式から分かるように、ただファンの力が強くても(風量が多くても)、
肝心のフィルター性能が低ければ汚れた空気が素通りしてしまい、高いCADR値は得られません。
逆に、どんなに高性能なフィルターでも、ファンが弱ければ空気をきれいにできません。
「フィルター性能」と「風量」の両方が高レベルでバランスされていて、初めて高いCADR値を実現できるのです。
3種類の汚れに対するスコア
CADRは、私たちの生活空間に存在する代表的な3つの汚染物質、
「タバコの煙」「ホコリ」「花粉」に対して、それぞれ個別に測定・表示されるのが一般的です。
タバコの煙 (Smoke): 最も粒子が細かく(0.1~1.0μm)、除去が難しい。ウイルスやPM2.5など、微細な粒子を除去する能力の目安になります。
ホコリ (Dust): 中程度の大きさの粒子(0.5~3μm)。ハウスダストなどの除去能力の目安です。
花粉 (Pollen): 粒子が大きい(5~11μm)。花粉やカビの胞子など、アレルギーの原因物質を除去する能力の目安です。
客観的な比較:
メーカーや国が違っても、
「きれいにするスピード」という基本的な性能を同じモノサシで比較できます。
製品選びの目安:
消費者が自分の部屋の広さに合った性能の製品を選ぶ際の、
分かりやすい国際的な目安となります。
日本では、現状、CADRを性能表示のメインにする動きはあまり見られません。その代わりに広く使われているのが、日本電機工業会(JEMA)が定めた規格に基づく「適用床面積(〇畳用)」という表示です。これは日本の住環境などを考慮して作られた目安であり、多くの消費者にとって馴染み深いものです。
日本国内のマーケティング
メーカー独自の技術ブランドを前面に出し、除菌・脱臭・ウイルス抑制といったCADRでは測れない付加価値をアピールすることが一般的です。
加湿機能付きのモデルが人気なのも、日本の特徴と言えるでしょう。
このように、日本では独自の基準や技術アピールが中心となっており、結果としてCADRは補助的な情報に留まることが多いのが現状です。
これからの日本のトレンド:多様化するニーズと求められる技術
今後も「適用床面積」表示や独自技術アピールは続くと考えられますが、
日本の消費者が求める性能も多様化・深化しています。
まとめ
今回は、空気清浄機選びの重要な指標「CADR」について解説しました。
CADRとは「1分間に供給できる、きれいな空気の量」を示す世界基準の指標。
「フィルター効率 × 風量」で決まり、数値が高いほど高性能。
「CADR」の意味を知るだけで、スペック表の数字がただの数字ではなく、製品の実力を示すストーリーとして見えてきます。
CADEを知る意味とは?
・空気清浄機の性能評価や市場での扱われ方
ここまで見てきたように、空気清浄機の性能評価や市場での扱われ方は、
世界と日本で異なる点があります。
日本に住む私たちがCADRを知る意味は?
良い製品を選ぶための普遍的な視点を持てることが考えられます。
この知識を活用して、ぜひご自身にぴったりの一台を見つけてください。
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