2025.10.24 静電気対策資材

目次
電気集塵機の仕組みとは?乾式・湿式の違いから効率を高める電極の秘密まで
はじめに:電気集塵機とは何か?
工場の製造ラインや作業場、道路トンネルなどで発生する、目に見えないほどの細かなホコリや煙(粉塵)。
これらは作業環境を悪化させるだけでなく、製品の品質や働く人々の健康にも影響を及ぼします。
「電気集塵機」は、このような空気中に漂う微粒子を、静電気の力を利用して磁石のように引き寄せ、効率的に捕集するための装置です。
フィルター式の集塵機では取り除きにくい、非常に微細な粒子までキャッチできるのが大きな特徴です。
このコラムでは、電気集塵機が粉塵を集める仕組みから、その種類の違い、そして性能を最大限に引き出すための技術的なポイントまでを、分かりやすく解説していきます。
電気集塵機は、静電気の原理を巧みに利用した、以下の4つのステップで空気中の粉塵を捕集します。
ステップ1:イオンを生成する(コロナ放電)
集塵機の内部には、プラスとマイナスの電極が設置されています。まず、放電極(多くはマイナス極)に高い電圧をかけると、「コロナ放電」という現象が起こり、放電極の周りの空気が電気的に分解(イオン化)され、大量のマイナスイオンが生成されます。
ステップ2:粉塵を帯電させる
生成されたマイナスイオンは、空気中を漂っている粉塵に次々と衝突し、付着します。これにより、もともと電気を帯びていなかった粉塵が、マイナスの電気を帯びた状態(マイナスに帯電)に変わります。
ステップ3:静電気の力で捕集する
マイナスに帯電した粉塵は、プラスの電気を帯びた集塵極に、まるで磁石のように強力に引き寄せられます。
引き寄せられた粉塵は集塵極の表面に次々と付着し、空気中から取り除かれます。
ステップ4:捕集した粉塵を除去・回収する
集塵極に溜まった粉塵は、定期的に除去・回収されます。この除去方法の違いが、次章で解説する集塵機の種類(乾式・湿式)に繋がります。
電気集塵機は、集塵極に付着した粉塵の除去方法によって、大きく「乾式」と「湿式」の2種類に分けられます。
(1)乾式 電気集塵機
特徴
集塵極をハンマーで叩いたり、振動させたりして、付着した粉塵を乾燥したまま払い落として回収する。
メリット
・捕集した粉塵の処理が容易
・排水処理設備が不要で、ランニングコストが低い
デメリット
・払い落とす際に粉塵が再飛散するリスクがある
・可燃性粉塵を扱う場合は防爆対策が必要
・払い落とし装置の騒音が発生する
用途
木材加工場、金属工場、製粉所など
(2)湿式電気集塵機
特徴
集塵極に水を噴霧し、付着した粉塵を洗い流して泥水として回収する
メリット
・粉塵が濡れているため、再飛散や火災・爆発のリスクが極めて低い
・有害な化学物質や重金属なども安全に処理できる
デメリット
・使用した水の排水処理が必要
・水分による装置の腐食リスクがある
・導入コストやメンテナンス費用が高い傾向がある
用途
化学工場、金属加工場など火花や爆発の危険性がある環境、有害物質を扱う工場等。
【選び方のポイント】
安全性を最優先し、火災リスクや有害物質を扱うなら湿式。
ランニングコストや粉塵処理の手軽さを重視するなら乾式。(ただし防爆や騒音対策が必要な場合あり)
電気集塵機の性能は、内部に設置された2種類の「電極」の働きによって決まります。
放電極(主にマイナスの電荷)
役割: コロナ放電を発生させ、空気中の粉塵を帯電させる「きっかけ」を作る、非常に重要なパーツです。
形状: コロナ放電を効率的に起こすため、先端が尖った形状が一般的です。針状や、無数の細い繊維を束ねたブラシ状などがあります。
集塵極(プラスの電荷)
役割: マイナスに帯電した粉塵を静電気の力で引き寄せ、捕集する「受け皿」となるパーツです。
形状: 帯電した粉塵を効率よく受け止められるよう、表面が滑らかな平板型や円筒型などが一般的です。
この2つの電極間に数万ボルトという高電圧をかけることで、強力な電界(静電気が働く空間)が生まれ、効率的な集塵が可能になります。
電気集塵機の性能をさらに高めるには、どうすればよいのでしょうか。そのカギは「放電極の形状」、特に「電極をいかに細くするか」にあります。
理由1:より低い電圧でコロナ放電を促進できる(省エネ)
物理的に、物体の先端が細く尖っているほど、その先端に電気が集中しやすくなる性質(電界集中)があります。
雷がビルの屋上や避雷針に落ちやすいのと同じ原理です。
放電極を細くすることで、この電界集中が起こりやすくなり、より低い電圧で効率的にコロナ放電を発生させることができます。これは、集塵機の消費電力を抑える、つまり省エネルギーに直結します。
理由2:より強力な電界で捕集力を高める(高効率)
細い電極は、局所的に非常に強い電界を生み出します。
これにより、粉塵をより強く帯電させ、集塵極へ引き寄せる力を増大させることができます。結果として、集塵効率そのものが向上します。
つまり、放電極を「細くする」ことは、「省エネ」と「高効率」を両立させるための最も重要な技術なのです。
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