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2025.10.24 クリーンルームの豆知識

【クリーンルームとは?】製造現場の舞台裏  クリーンルームの重要性

クリーンルームとは?クラスの違いから業界別用途、異物対策まで徹底解説
はじめに:クリーンルームとは何か?
スマートフォンや医薬品、加工食品など、私たちの生活に欠かせない多くの製品は、極めて清浄な環境で製造されています。その環境を実現するのが「クリーンルーム」です。
クリーンルームとは、簡単に言えば「空気中のホコリやゴミ(浮遊微小粒子)、微生物を、定められた清浄度レベル以下に管理し、維持するために設計された特殊な部屋」のことです。このコラムでは、現代のモノづくりに不可欠なクリーンルームの仕組みから、その性能を示す「クラス」の違い、そして清浄度を維持するための重要ポイントまでを、分かりやすく徹底解説していきます。

①:なぜ清浄を保てるのか?クリーンルームを支える「4原則」

汚染物質を「持ち込まない」
外部からホコリや粒子を持ち込まないことが基本です。作業者は入室前にエアシャワーを浴びて衣服のホコリを吹き飛ばし、専用のクリーンウェア(防塵衣)を着用します。
また、部屋の内部の気圧を外部より高く設定(陽圧管理)することで、ドアの開閉時に外部の空気が流入するのを防ぎます。

内部で「発生させない」
クリーンルーム内では、人間自身や使用する機材が汚染の発生源になり得ます。
そのため、作業者は発塵の少ないクリーンウェアで全身を覆い、発塵しやすい紙や鉛筆などの持ち込みを禁止し、専用の備品を使用します。

汚染物質を「堆積させない」
発生してしまった粒子が床や壁、設備に積もらないように、室内の気流が常に一方向に流れるように設計されています。
また、壁や床のつなぎ目はホコリが溜まりにくい滑らかな構造になっており、定期的な清掃によって清浄度が維持されます。

発生した汚染物質を「排除する」
室内の空気を常に循環させ、HEPAフィルターやULPAフィルターといった超高性能フィルターを通して粒子を濾し取り、清浄な空気を室内に戻します。
この絶え間ない換気と濾過によって、浮遊している粒子を速やかに排除します。

②:清浄度の「ものさし」 — クリーンクラスとは?

「どのくらい清浄なのか?」を示す指標が「清浄度(クリーンクラス)」です。
このクラスは、一定の体積の空気中に、特定の大きさの粒子が何個存在するかによって定められています。クラスを示す数字が小さいほど、粒子が少なく、清浄度が高い(高性能)ことを意味します。

2つの規格「ISO規格」と「FED規格」
クリーンクラスには、主に2つの規格が存在します。
規格名
・ISO規格 国際標準化機構(ISO)が定めた世界標準の規格。単位はメートル法(1立方メートルあたり)。現在はこちらが公式な規格。
・FED規格 かつて主流だった米国連邦規格。単位はフィート法(1立方フィートあたり)。2001年に廃止されたが、現場では今なお広く使われている。

※現在、公式にはISO規格が用いられますが、現場では長年の慣習からFED規格の呼称が使われることが非常に多いため、両方を理解しておくことが重要です。

なぜ古い「FED規格」がいまだに使われるのか?
ISO規格が公式であるにも関わらず、現場で「クラス10000」といったFED規格の呼称が根強く使われるのには理由があります。
それは、FED規格の数字が直感的で分かりやすいからといわれています。
例えば「ISOクラス7」は、規格上「1立方メートルあたり0.5μm以上の粒子が352,000個以下」という定義になり、数字が大きくてイメージしにくいです。
一方、旧FED規格の「クラス10000」は「1立方フィートあたり0.5μm以上の粒子が10,000個以下」と、クラス名と粒子数が一致しており、現場の感覚として理解しやすいのです。

身近な環境とクリーンクラス
では、最高の清浄度とはどれほどのものなのでしょうか。身近な環境をFED規格で見てみると、その凄さが分かります。

一般的な工場: クラス 10,000,000 以上
オフィス: クラス 1,000,000 以上
空気が綺麗と言われる森の中: クラス 10,000~100,000
半導体製造の前工程: クラス 1~10

私たちが「空気がきれい」と感じる森の中でも、半導体工場に比べれば1,000倍以上も粒子が多いことになります。クリーンルームがいかに異次元の清浄空間であるかが分かります。

③:業界別に要求される清浄度と具体的な用途

クリーンルームのクラスは、製造する製品の精密さや求められる品質によって使い分けられます。

FED規格:クリーンクラス1〜100
ISOクラス3~4
半導体工場
半導体製造では最も厳格な清浄環境が必要とされています。
半導体工場のクリーンルームは通常、クリーンクラス1〜100の範囲内とされています。
この高度な清浄度は、集積回路の製造、エッチング、蒸着、研磨などのプロセスにおいて極めて重要と言われています。

FED規格:クリーンクラス100〜10,000
ISOクラス5~7
電子部品工場
電子部品の製造には、クリーンクラス100〜10,000のクリーンルームが一般的と言われています。
このレベルの清浄度は、プリント基板、ディスク、コンデンサーなどの製品の生産性向上と品質管理に適しています。

光学機械工場
レンズやカメラ、レーザーなどの高精度製品を製造する光学機械工場では、電子部品工場と同程度の清浄度が求められます
(クリーンクラス100〜10,000程度)

薬品・食品工場
薬品や食品の製造では、クリーンクラス100〜100,000の範囲のクリーンルームが使用されます
これは乳製品や醸造品、食肉加工における虫の混入対策などに有効です。

FED規格:クリーンクラス1,000〜100,000
ISOクラス6~8
印刷工場
印刷工場では、クリーンクラス1,000〜100,000のクリーンルームが一般的です。
これにより製品の仕上がりの向上と品質管理が可能になります。

自動車部品工場
自動車部品製造では、主に目に見える大きさの異物(鉄の切粉、鉄のコゲ、くずなど)の管理が重要です。

クリーンルームの維持管理
クリーンルームの清浄度を維持するには、適切な清掃と管理が不可欠です。
特に繊維くずや金属片などの異物に注意が必要です。
これらの異物は製品の品質や性能に直接影響を与える可能性があるため、定期的な清掃と異物の発生源の特定が重要です。

④クリーンルーム最大の敵!「異物」の正体と維持管理

クリーンルームの目的は「異物」を管理することに他なりません。どんなに高性能な設備を導入しても、日々の維持管理を怠ればその性能は発揮できません。

クリーンルームにおける「異物」とは?
異物と一口に言っても、その正体は様々です。

人間由来: 毛髪、皮膚片、フケ、唾液の飛沫
衣類由来: 衣服から出る繊維くず
環境由来: 外部から侵入した塵埃(ホコリ)
資材・設備由来: 金属片、機械の摩耗粉、スリットカス

業界によって「敵」は変わる
問題となる異物は、業界によって異なります。
食品工場: 金属片、ガラス、虫、毛髪などが混入すれば、重大な健康被害に繋がります。
電子部品: 導電性のある繊維くずや金属片は、回路をショートさせる原因となります。
塗装業界: 目に見えるか見えないかギリギリの大きさのホコリ(ブツ)でも、製品の仕上がりを大きく損ないます。
医療機器: 繊維くずや皮膚片は、人間にアレルギー反応などを引き起こすリスクがあります。

清浄度を維持するための重要ポイント
クリーンルームの性能を維持するためには、前述した「4原則」を徹底し、異物の発生源を特定・管理することが不可欠です。

適切なクリーンウェアの選定と正しい着用の徹底、発塵の少ない備品の使用、そして何より定期的な専門の清掃と、作業員一人ひとりの高い意識が求められます。

まとめ:高精度なモノづくりを支える清浄空間
クリーンルームは、単に「綺麗な部屋」なのではなく、厳格な規格と「4原則」に基づいて設計・運用され、日々の徹底した維持管理によって支えられている高度な技術空間です。
私たちが日々利用するスマートフォンから、命を支える医薬品まで、現代社会の様々な製品は、このクリーンルームという目に見えない土台の上で、その品質と安全性が保たれています。自社の製品に求められる品質を理解し、適切なクラスの環境を構築・維持することが、これからのモノづくりにおいてますます重要になっていくでしょう。

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