TOPへ戻る

2025.10.24 包装についての豆知識

【ラミネートとは?】様々な性能を持つ多層フィルムの秘密


① ラミネートフィルムは現代包装技術の要

ラミネートフィルムとは、単一の素材では得られない多様な機能を付与するために、
異なる種類のフィルムを複数貼り合わせて作られる高機能な多層フィルムのことです。
この技術により、包装される製品(内容物)の特性や保護要件に合わせて、
防湿性、ガスバリア性、遮光性、強度、そして特にデリケートな電子部品などを守るための静電気防止機能などを高いレベルで実現することが可能になります。
一見すると一枚のフィルムに見えますが、その内部には目的に応じて設計された複数の層が存在し、内容物を最適な状態で保護するという重要な役割を担っています。

② なぜ?:

どうしてラミネートフィルムは高機能なのでしょうか?
ラミネートフィルムが高機能である理由は、それぞれの層が持つ固有の特性を組み合わせることで、単一素材では達成できない複合的な性能を発揮できるからです。

(1)機能性の付与: ラミネート加工によって、「防湿性」「ガスバリア性」「遮光性」「耐熱性」「静電気防止」「真空適性」「強度」といった、
内容物の保護に不可欠な様々な機能を付与、または強化できると述べられています。

特に静電気防止機能は、電子部品などの精密機器を静電気放電(ESD)による破壊から守る上で極めて重要です。

多様な用途: これらの高機能性により、ラミネートフィルムは
「精密機器の包装」「化学製品の包装」「金属部品の防錆包装」「建材の保護」「工業用原料の保管」など、非常に幅広い分野で使用されています。
これは、ラミネート技術が様々な要求に応えられる柔軟性と高い性能を持っていることを示しています。

多層構造による機能分担: 一般的なラミネート袋は、「ベース層」「中間層(必要に応じて)」「シーラント層」という役割の異なる層で構成されています。
ベース層(PET、OPP、PAなど):外側に位置し、強度、耐熱性、印刷適性などを担います。
中間層(アルミ箔、ポリアミド系フィルムなど):ベース層とシーラント層の間に挿入され、ガスバリア性や遮光性などの補完機能を担います。
アルミ箔は特に高いバリア性が求められる場合に用いられます。
シーラント層(PE、PPなど):最も内側に位置し、袋を熱で接着(ヒートシール)する機能や、内容物との適合性を担います。
この層の性能が低いと、内容物の漏れや外気の影響による品質劣化につながります。
このように、各層が専門的な役割を果たすことで、フィルム全体として高い性能を発揮するのです。

(2)目的に合わせた製造方法: ラミネートフィルムは、その目的や要求される性能、コストに応じて様々な製造方法で作られます。
ドライラミネート: 接着剤を使用し、高い接着強度や耐熱性・耐薬品性が求められる用途(レトルト食品、医療用包材、アルミ防湿袋など)に広く使われます。
ウェットラミネート: 水溶性接着剤を使用し、環境負荷が低く、紙へのラミネート(書籍カバーなど)に適しています。
押し出しラミネート: 接着剤を使わず溶融した樹脂で貼り合わせるため、残留溶剤がなく、高速加工が可能でコスト効率に優れます(食品包装、アルミ防湿袋、容器の蓋材など)。
ノンソルラミネート: 無溶剤接着剤を使用し、環境負荷が非常に低く、残留溶剤の心配がないため、食品(スナック菓子、液体スープ)や医薬品包装に適しています。
蒸着ラミネート: アルミニウムなどをフィルム表面に蒸着させ、非常に薄い金属層で高いバリア性(ガス、湿気、光)と軽量性を実現します。
アルミ箔より柔軟性があり、コストも抑えられますが、バリア性はアルミ箔にやや劣ります。

(3)多様な基材: ラミネートに使用される基材(フィルム素材)も多岐にわたります。
ポリエチレン(PE): 耐水性、柔軟性に優れ、シーラント層によく使われます。
ポリエチレンテレフタレート(PET): 透明性、ガスバリア性、強度に優れ、ベース層によく使われます。
ナイロン(PA): 強度、耐熱性、耐ピンホール性に優れ、真空包装やレトルトパウチに使われます。
アルミニウム箔: 最高のバリア性(ガス、湿気、光)を持ちますが、柔軟性に劣り、コストも高めです。中間層に使われることが多いです。
ポリブチレンテレフタレート(PBT): 耐薬品性、耐熱性、機械的特性に優れ、産業用途で注目されています。
これらの基材を適切に組み合わせることで、目的の機能を持つラミネートフィルムが設計されます。

以上の点から、ラミネートフィルムは、層構造、製造方法、基材の選択肢が豊富であり、
それらを組み合わせることで多様な高機能性を実現できるため、現代の包装技術において不可欠な存在となっていると言えます。

③ 対策は?:

静電気から製品を守るには?
以上述べたように、ラミネートフィルムは静電気防止機能を付与することができます。
これは、静電気に弱い電子部品や精密機器、粉体などを輸送・保管する際に、
静電気放電(ESD)による破壊や、静電気による粉塵の付着といったトラブルを防ぐために非常に重要です。

具体的な対策としては、以下の点が挙げられます。

(1)静電気対策が施されたラミネートフィルムを選択する:
製品を包装する際には、その製品の特性(特に静電気に対する感受性)を考慮し、
適切な静電気防止性能を持つラミネートフィルム(またはそれを使用した袋)を選ぶことが最も直接的で効果的な対策です。

(2)ラミネートの構造を理解する:
静電気対策用のラミネートフィルムは、多くの場合、表面または内部の層に導電性や帯電防止性の材料が組み込まれています。
例えば、以下のようなタイプがあります。
界面活性剤練り込み/塗布タイプ: フィルム表面に湿度依存性の帯電防止効果を持たせます。
コストは低いですが、効果の持続性や環境依存性に課題がある場合があります。
導電性フィラー(カーボンなど)練り込みタイプ: フィルム自体に導電性を持たせ、湿度に依存しない安定した性能を発揮しますが、
透明性が失われることがあります。
導電性ポリマータイプ: フィルム自体が導電性を持ち、透明性を維持できる場合もあります。
湿度依存性が低く、持続性に優れますが、コストが高くなる傾向があります。
金属蒸着/金属箔タイプ(シールド袋): フィルムの層間にアルミニウムなどの金属層を設けることで、
外部からの静電気ノイズを遮断(シールド)し、内部で発生した電荷を速やかに減衰させる効果があります。
非常に高いレベルの静電気保護が必要な場合に用いられます。

(3)用途に応じた性能レベルを選ぶ:
すべての用途で最高レベルの静電気対策が必要なわけではありません。
要求される保護レベル(表面抵抗値、減衰時間、シールド性能など)に応じて、適切な性能とコストバランスを持つ製品を選ぶことが重要です。
コラムの「ラミネートの選択基準」で示されているように、内容物、必要なバリア性、耐熱性などと合わせて総合的に判断する必要があります。

(4)取り扱い環境にも注意:
静電気対策が施された包装材を使用しても、作業環境や取り扱い方法が不適切だと静電気トラブルが発生する可能性があります。
作業場の湿度管理、作業者のアース(リストストラップ着用など)、導電性のマットや床材の使用など、
包装材だけでなく総合的な静電気対策を検討することも有効です。

④ どのような製品を使ったらよいか:静電気対策用ラミネート製品の例

静電気対策を目的としたラミネートフィルム製品(包装袋など)は、様々なメーカーから提供されています。
要求される性能レベルや用途に応じて、以下のような種類の製品が一般的に利用されています。

1. 帯電防止袋
特徴: フィルム表面または内部に帯電防止剤が練り込まれているか塗布されており、摩擦による静電気の発生を抑制します。ピンク色や青色に着色されていることが多いですが、透明なタイプもあります。湿度に性能が依存するタイプと、しにくいタイプ(高分子型など)があります。
主な用途: 静電気の発生を抑えたいが、シールド性能までは不要な部品や製品の包装、輸送、保管。EPA(静電気保護区域)内での使用に適しています。
性能: 表面抵抗値で規定されることが多い(例: 10^9 ~ 10^12 Ω/sq)。
取扱会社/メーカー例:
株式会社大倉工業、積水化学工業株式会社、三菱ケミカル株式会社、株式会社ケンエー。

2. 導電袋
特徴: フィルムにカーボンブラックなどの導電性フィラーが練り込まれており、電気を通しやすい性質(低い抵抗値)を持っています。速やかに電荷を減衰させ、接地(アース)することで除電効果を発揮します。通常は黒色で不透明です。
主な用途: 静電気に対して非常に敏感な部品や、可燃性の粉体などの包装。アースを取ることが前提となります。
性能: 表面抵抗値や体積抵抗値で規定されることが多い(例: 10^6 Ω/sq 未満)。
取扱会社/メーカー例: 古河電気工業株式会社、アキレス株式会社、デンカ株式会社。

3. 静電気シールド袋
特徴: ラミネート構造の中間層にアルミニウムなどの金属蒸着層や金属箔層を持ち、外部からの静電気放電(ESD)を遮断(シールド)し、内部の製品を保護します。袋の外側と内側は帯電防止層になっているのが一般的です(ファラデーケージ効果を利用)。半透明なグレーやシルバーの色をしています。
主な用途: プリント基板(PCB)、ICチップ、ハードディスクドライブなど、静電気に対して非常にデリケートな電子部品の輸送・保管。EPAの内外で使用できます。
性能: シールド性能(減衰性能)、表面抵抗値などで規定されます。
取扱会社/メーカー例: 3M Japan、株式会社フジコー。

4. 帯電防止機能付きバリア袋
特徴: 上記の静電気対策機能(帯電防止やシールド)に加えて、アルミ箔やアルミ蒸着、高性能バリアフィルムなどを使用することで、高い防湿性やガスバリア性を兼ね備えたラミネート袋です。
主な用途: 湿気と静電気の両方から保護する必要がある電子部品、精密機器、粉体薬品などの長期保管・輸送。
取扱会社/メーカー例: 株式会社大倉工業、株式会社フジコー、株式会社ケンエー。

※まとめ
製品選択のポイント
保護対象: 何を静電気から守りたいのか?(部品の感度レベルは?)
要求性能: 静電気発生抑制だけで良いか、シールド性能が必要か? 防湿性やガスバリア性も必要か?
使用環境: EPA内か外か? 湿度管理はされているか?
コスト: 要求性能とコストのバランス。
これらの点を考慮し、各メーカーが提供する製品のスペックシート
(表面抵抗値、減衰時間、透湿度、酸素透過度、シールド性能など)を確認して、
最適な製品を選定することが重要です。

ご相談・お問い合わせはこちら

お問い合わせはこちら 

関連製品

キーワードで商品検索

サイトTOPへ