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2025.10.24 包装についての豆知識

【無添加ポリエチレンフィルムとは?】比較解説 無添加ポリエチレンと一般的なポリエチレンの違い


コラムNo29 無添加ポリエチレンフィルムとは

私たちの身の回りには、様々なポリエチレン製品があふれています。
包装フィルム、袋、容器など、その用途は多岐にわたります。
しかし、「ポリエチレン」と一言で言っても、実はいくつかの種類があることをご存知でしょうか?
特に、精密な部品やデリケートな製品を扱う現場では、「無添加ポリエチレンフィルム」という選択肢が重要になってきます。

このコラムでは、なぜ無添加ポリエチレンフィルムが注目されるのか、そして一般的なポリエチレンフィルムとの違いは何かを、静電気の知識があまりない方にも分かりやすく解説していきます。

① 無添加ポリエチレンフィルムとは? – 純粋さがもたらすメリット

まず、このコラムの主役である「無添加ポリエチレン」についてご説明します。

無添加ポリエチレンとは?
ポリエチレンを製造する際に、通常、強度を高めたり、加工しやすくしたりするために様々な物質(添加剤)が加えられます。無添加ポリエチレンとは、これらの添加剤を一切加えていない、純粋なポリエチレンのことを指します。

無添加ポリエチレンフィルムの特徴
(1)添加剤不使用: 一般的なポリエチレンフィルムでよく使われる、酸化防止剤、滑りやすくするためのスリップ剤、フィルム同士がくっつくのを防ぐアンチブロッキング剤などの添加剤を一切含んでいません。

(2)高いクリーン性: 添加剤が使われていないため、フィルム表面から添加剤が滲み出てくる「ブリードアウト現象」が起こりません。また、フィルム自体から発生する微細なチリ(発塵性)も著しく低くなります。

(3)クリーンルーム対応: 添加剤に由来する汚染の心配がないため、ホコリや汚染を極端に嫌うクリーンルームでの使用に適しているものもあります。

無添加ポリエチレンフィルムのメリット
(1)製品への悪影響の防止: 添加剤が製品に付着したり、化学反応を起こしたり、微細なキズを付けたりするリスクを防ぎます。

(2)高純度: 添加物がないため、非常に純度の高い包装材料として利用できます。

(3)医薬品・電子部品・半導体・食品業界などに最適: 高い清浄度が求められるこれらの産業分野で、製品の品質を守るために適しています。
特に、精密な電子部品や半導体は、わずかな汚染や静電気も大敵となるため、無添加ポリエチレンのクリーン性が重宝されます。

無添加ポリエチレンフィルムのデメリット
一方で、添加剤を加えないことによるデメリットも存在します。
(1)強度がやや低い場合がある: 一般的なポリエチレン製品に比べ、引っ張り強度などが低い場合があります。

(2)耐熱性・耐寒性が低い場合がある: 高温や低温の環境下での耐久性が、添加剤で強化されたポリエチレンに比べて劣る場合があります。

(3)価格が高い傾向がある: 添加剤を使わずに安定した品質で製造するにはコストがかかるため、製品価格も比較的高くなる傾向があります。

② なぜ?:

どうして一般的なポリエチレンフィルムには添加剤が必要なのでしょうか?
それでは、なぜ多くのポリエチレンフィルムには、わざわざ添加剤が加えられているのでしょうか?
それは、ポリエチレンという素材そのものの性質を補い、より使いやすく、様々な用途に対応できるようにするためです。

添加剤の主な目的
一般的なポリエチレン製品には、フィルムの成形や加工をしやすくしたり、製品の性能を高めたりするために、以下のような目的で様々な添加剤が加えられます。

(1)強度向上: 製品をより丈夫にする。
(2)耐熱性向上: 高温環境でも変形しにくくする。
(3)耐寒性向上: 低温環境でも割れにくくする。
(4)柔軟性向上: 製品を柔らかくし、扱いやすくする。
(5)耐薬品性向上: 化学薬品に対する耐性を高める。
(6)着色: 製品に色を付け、識別しやすくしたり、デザイン性を高めたりする。
(7)UVカット: 紫外線による製品の劣化を防ぐ。
(8)酸化防止: 製品が空気中の酸素と反応して劣化するのを防ぐ。
(9)耐ブロッキング性向上: フィルムや袋同士がくっついてしまう「ブロッキング」を防ぐ。
(10)導電性の付与: 静電気の発生を抑えたり、溜まった電気を逃がしたりする(静電気対策)。

代表的な添加剤の種類
上記のような目的を達成するために、具体的には以下のような添加剤が使われています。
(1)酸化防止剤: ポリエチレンの酸化を抑制し、製品の寿命を延ばす。
(2)着色剤: 製品に色をつける。
(3)耐熱剤: ポリエチレンの耐熱性を向上させる。
(4)耐寒剤: ポリエチレンの耐寒性を向上させる。
(5)柔軟剤: ポリエチレンの柔軟性を向上させる。
(6)UV吸収剤: 紫外線による劣化を防止する。
(7)難燃剤: 火がつきにくくする。
(8)ブロッキング防止剤 (アンチブロッキング剤): 袋同士が張り付かないようにする。
(9帯電防止剤: 静電気の発生を抑える。

このように、多くのポリエチレン袋やフィルムは、これらの添加剤の恩恵を受けて製造され、私たちの生活や産業を支えています。

添加剤が引き起こす「ブリードアウト現象」とは?
しかし、これらの添加剤は、製品の品質や加工性を向上させる一方で、「ブリードアウト現象」を引き起こす原因となる可能性があります。
ブリードアウトとは、ポリエチレンフィルムの内部に含まれている添加剤が、時間の経過や温度変化などによってフィルムの表面に滲み出てくる現象のことです。
このブリードアウトによって、次のような問題が発生する可能性があります。

(1)滲み出た添加剤が、包装している製品に移行(付着)してしまう。
(2)添加剤が、製品に含まれる薬品などと化学反応を起こしてしまう。
(3)滲み出た添加剤の微粒子が、精密な製品に細かなキズを付けてしまう。

特に、高い清浄度が求められる電子部品、半導体、医薬品、食品などの分野では、このような添加剤による汚染や影響は、製品の品質や性能を著しく損なう可能性があるため、大きな問題となる可能性があります。

③ 対策は?:

添加剤によるリスクへの対策:無添加ポリエチレンフィルムの活用
前述したブリードアウト現象による製品への悪影響(添加剤の移行、化学反応、微細なキズの発生など)を防ぐことができるのが、無添加ポリエチレンフィルムです。
添加剤を使用していないため、ブリードアウト現象そのものが起こりません。
これにより、製品を汚染から守り、本来の品質を維持することができるのです。
電子部品、食品、半導体、医薬品など、特に高い清浄度が要求され、添加剤による汚染を避けたい用途においては、無添加ポリエチレンフィルムは非常に有効な選択肢となります。

④ どのような製品を選べばよいか? – 用途と静電気対策の観点から

無添加ポリエチレンフィルムは、そのクリーン性の高さから、以下のような業界や用途で需要が高まっています。

電子部品業界: 半導体ウェハー、集積回路(IC)、精密基板などの包装・保護
食品業界: 添加物を嫌う食品や、風味を損ないたくない食品の包装
半導体業界: 製造工程でのクリーンな搬送・保管
医薬品・医療機器業界: 厳格な衛生管理が求められる製品の包装
その他クリーン環境: クリーンルーム内での部材や器具の包装・保管

これらの業界では、製品の品質や性能に影響を与える可能性のある添加剤の存在を避けるため、無添加ポリエチレンフィルムをはじめとするクリーンな包装材へのニーズが拡大しています。

静電気対策が必要な場合の選択肢
無添加ポリエチレンはクリーン性に優れますが、それ自体には静電気を防止する機能は基本的にありません。
電子部品など、静電気による破壊(ESD破壊)や、静電気によるホコリの吸着が問題となる場合には、静電気対策が施された包装材を選ぶ必要があります。
以下に、一般的な静電気対策用の包装材(フィルム・袋)と、それらを扱う代表的なメーカー・取扱会社の例をご紹介します。

帯電防止ポリエチレンフィルム/袋:
特徴: 界面活性剤タイプの帯電防止剤を練り込むか塗布することで、空気中の水分を吸着しやすくし、電気を逃がす層を表面に形成します。湿度依存性があります。比較的安価です。
用途: ホコリの付着防止、静電気によるまとわりつき防止など、比較的マイルドな静電気対策が必要な場合に。
メーカー/取扱会社例: 大倉工業、アキレス、シーアイ化成、ケンエーなど。

導電性ポリエチレンフィルム/袋 (カーボン練り込みタイプなど):
特徴: カーボンブラックなどの導電性フィラーをポリエチレンに練り込むことで、素材自体に電気を通す性質(導電性)を持たせたものです。湿度に依存せず、安定した抵抗値を示します。半透明~黒色不透明なものが多くなります。
用途: 静電気放電(ESD)に弱い電子部品やデバイスの保護、可燃性物質を扱う環境での静電気スパーク防止など、より確実な静電気対策が必要な場合に。
メーカー/取扱会社例: 三菱ケミカル、デンカ、東レフィルム加工、各種包装資材商社など。

永久帯電防止ポリエチレンフィルム/袋 (高分子タイプなど):
特徴: 界面活性剤タイプとは異なり、ブリードアウトしにくい高分子型の帯電防止剤を使用しています。クリーン性が高く、帯電防止性能が長期間持続します。湿度依存性が低いものもあります。
用途: クリーンルーム内での使用や、長期間の保管、電子デバイスの包装など、クリーン性と持続的な帯電防止性能が両立して求められる場合に。
メーカー/取扱会社例: アキレス、ケンエー等。

※まとめ製品選びのポイント
要求される清浄度: 添加剤のブリードアウトが許容されるか、無添加である必要があるか。
静電気対策のレベル: ホコリ付着防止レベルで良いか、ESD保護が必要か。
透明性: 中身が見える必要があるか。
強度やその他の物性: 内容物に対して十分な強度があるか。
コスト: 要求性能と価格のバランス。
これらの要素を総合的に考慮し、用途に最適な包装材を選ぶことが重要です。

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